僧侶とホストと若頭、３つの顔に揺れる恋

６ 凛子side 紫壇の香

早朝から神社の境内や本堂の掃除をするのが、あたしの日課になっている。

数ヶ月、修行で世話になった礼だ。

それと早朝から掃除をして、お経をあげると身も心もスッキリする。

９時過ぎ、組に戻ると悠斗の噂でもちきりだった。

歌舞伎町のホストクラブの騒動と悠斗が蹊城大学付属高校の裏番だったという話。

そして梁瀬隊長の処分に悠斗が絡んでいるという話。

蹊城の裏番はかなりのやり手だということは、あたしも知っているし、有名な話だった。

だけど、その裏番が悠斗だと言われてもピンと来ない。

悠斗はあたしの中で、いつも優等生だったし事実、誰もが認める優等生だった。

松尾組の襲撃があった時、梁瀬隊長が話していた悠斗の闘いぶりは、あたしの中で今でも腑に落ちない。

悠斗が蹊城の裏番なら納得がいくという、レベルの強さでもない。