僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「お嬢。総長も姐さんも若頭のことをかってらっしゃるんでさあ。連合の姐さん方の評判も良好、姐さん方同士の関係も若頭がいらしてから丸くなったらしいんで」

「悠斗がいざこざなんて起こすかよ。僧侶だぜ。……まあ、蹊城の裏番だったって話はあたしもビックリだけど」

「お嬢もご存知なかったんすか」

「悠斗みたいな優等生が裏番やってたなんて、誰も知らねえよ」

「ですよね。あっしらも未だに信じらんねえんです。若頭があの赤い桜の痣の裏番だったってのが」

あたしの周りをいつの間にか、組員が取り囲んでいた。

「ちょっと待て。有名だったって話はあたしも知っちゃいるけど、あんたたちまで蹊城の裏番を知ているのか?」

「お嬢。ワルではなかったんす。むしろ、善人的な……えーと、お嬢は鼠小僧をご存知っすか」

「鼠小僧……義賊のか?」
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