僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
神社で毎朝、悠斗と顔を合わせ、悠斗の側でお経をあげて、悠斗と朝御飯を食べて、短大に通っていた頃の方がずっと、悠斗を間近に感じた。

堅気だった頃の悠斗の方が今よりずっと、身近に感じた。

「悠斗の隣、いつも塞がってんじゃん」

口をついて出た自分の言葉が虚しかった。

悔しさと寂しさがこみ上げてくる。

居ても立ってもいられず、自室へ向かった。

途中の廊下に佇む悠斗が居た。

「悠……」

呼びかけて躊躇うほどに、悠斗の横顔は綺麗で、今にも消えてしまいそうに儚げだった。

「悠斗」

あたしは悠斗の側に駆け寄り、悠斗の腰に手を回した。

「凛子? どうした、何かあったか?」

「悠斗、何処にも行かないで」

あたしはギュッと腕に力をこめた。

「そんな淋しそうな顔しないで。何処かに消えちゃいそうに悲しい顔しないでよ」
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