僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「凛子?」

「お花やお茶、書道、着付けももっと教えてよ。お経の時に居眠りするなって叱ってよ」

「そうだな」

悠斗の穏やかな声があたしを包む。

「ちゃんと寝て、ちゃんと休んで……ちゃんと帰ってきてよ」

あたしは悠斗の正面に回りこみ、悠斗の胸にしがみついた。

「わかった」

悠斗はあたしをギュッと抱きしめて、ふわりと包んだ。

「玄関の生け花は凛子だろ。上手くなったな」

悠斗の声に頭の中がふわふわする。

「昨日、台所におにぎり、作ってくれてたのは凛子だね。ありがとう、美味しくいただいたよ」

悠斗……気づいてたんだ、ちゃんとあたしのこと観てくれてるんだ。

嬉しくて涙腺が弛みそうだ。

「組の細々したことも、教わってやってくれてるんだろ。ありがとうな」

神社での修行を終えて、家に戻ってから色々と組の裏方に携わっている。
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