僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「バカ言うな。僧侶を極道の家の婿にできるわけないだろ」

「住職とは話がついている。あとはお前と悠斗の気持ちしだいだ」

住職と話は……意外な言葉だった。

「悠斗のこと、お前はどう思ってんだ?」

「どう……どうって。悠斗のことを意識したことねえし」

親父から面と向かって真顔で聞かれ、照れ臭くなり、言葉を濁したあたし。

「そうかーー。まあ1つ考えといてくれや」

悠斗は3歳年上の幼なじみだ。

彼に両親はいない。

物心つく頃、光泉寺の住職に預けられたそうだ。

諸事情は知らない。

あたしの親父は我孫子(あびこ)会連合総長、我孫子慶信だ。

親父は光泉寺の檀家で、神事法事や季節ごとの行事には、住職が悠斗を連れて組にお経を上げに来ている。

親父のあたしへの口癖は「悠斗の爪の垢を煎じて飲め」だ。
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