廻り道
「次は南米。五年ほど経ったらどこか分からないけど、また別の国。アフリカかどこかかな?」

僕は何も口に出さず、話している彼女の口元だけを見つめる。

瞳を見つめないのは、きっと彼女は今見られたくないと思っているから。

「・・・日本には、もう・・・戻ってくるつもりはないかな」

窓の外に向けた視線がどこか寂しそうだった。

「七年前の返事、してなかったよね」

沈黙が続きそうだったので、自ら口を開く。

彼女はこちらを向き、恐らくもう分かっているだろう答えを待つ。

「君にその夢を追いかけていてほしいし、僕は僕の夢を追う。お互いがお互いの夢の足枷にはなりたくないんだ」

彼女は小さく溜め息をつき瞳を閉じた。

少し瞼が震えたようにも見えたがすぐに開いて、またこちらに視線を向けた。

「あなたで良かった」

その瞳は少しだけ潤んでいるようにも見えた。

「七年間も私のわがままに付き合ってくれて、本当にありがとう」

彼女はゆっくりと立ち上がり、僕の横をすり抜けていった。

七年間

僕はこの答えを伝えるためだけに、彼女を待ち続けた。

けど、これからもお互いに同じ空を見続ける。

きっと、離れていても。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

海を越えたキャッチボール

総文字数/138

青春・友情1ページ

表紙を見る
桜の花びらのように

総文字数/599

恋愛(純愛)3ページ

表紙を見る
6月9日

総文字数/870

恋愛(純愛)3ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop