隻眼王の愛のすべて < コウ伝 >
半月ほど過ごしてみて、分かったことがある。
カーラは何事にも強気で快活なので彼女といると元気を貰える。
すこし高飛車なところがあるがよく言えばとにかく前進で押しが強いとも言え、そして頭も良かった。だからこちらの気持ちも上昇するのだ。
「ノエリア様、この本のほうが分かりやすいと思います」
種類ある歴史書のなかから、読みやすく分かりやすいものを届けてくれる。読んだことがあるのか先に目を通してくれたのかしおりを挟んでくれるなど、気が利くのだ。
「カーラ、このガルデ王国って場所はここからどれくらいかかるのかしら。前国王が度々訪れるほどお好きだったとあるけれど」
「そうですね、遠いです。雪山を越えてずっと海のほうです。話でしか聞いたことが無いのですけれど、ハマーユという港町があり気候が温暖で過ごしやすいそうです」
「ドラザーヌと友好関係にあり、現在もそれは続いています。あちらは海沿いの温暖な気候を利用して生花産業がさかんですって」
「品質のいい香水が有名なんですよね」
素敵ねぇ。ふたりで歴史書にある挿絵の花束や香水の瓶を見てうっとりしていた。そんな時間も楽しい。
そして、カーラはさすが公爵の娘、おしゃれのセンスもいい。
「ノエリア様は金髪で茶色の瞳だからこっちの濃い色の方が映えます。ドラザーヌは茶色の髪と青い瞳に合うよう誂えたものが多いけれど、ノエリア様は髪と目の色が稀なのだから変えなくちゃ」
ノエリアは侍女たちにされるがまま。もちろん好き嫌いはあるが、似合うと言われればその通りにしていた。
「カーラ様は本当に趣味がいいですよね」
サラも感心するのだ。
「本当。髪と瞳の色に合わせるなんて考えたことがなかった」
「ノエリア様とサラ様も色白だけれど似合う色が違うと思うの」
ああでもないこうでもないと色見本の布を顔に近づけて見てくれている。彼女も楽しんでいるようでよく笑うようになった。
カーラは刺々しさがなくなったぶん、持ち前の元気と明るさでサラはじめほかの侍女たちともうまくやっているようだった。
皆、国王襲撃とヒルヴェラに関する毒草混入事件のことは知らないが、カーラがスタイノ公爵令嬢であったことは知っている。
「ノエリア様は無頓着過ぎるんです。せっかく美人なのに……シエル様は王族専属の仕立屋がいるから流石にお似合いのものばかり、素敵ですよねぇ」
ノエリアは、シエルならばなんでも着こなしているので不満などなかった。
(どの色が似合うとかもよく分からないわ。シエル様は全部素敵に見えるもの)
腕組みをしてひとりで頷くノエリア。
「リウ様も背が高くて、そして濃い色が似合いますよね。青とか」
サラの言葉にノエリアが頷く。カーラもニコニコしながら聞いていた。
「ノエリア様、着替えが終わったら温室でティータイムいかがでしょう」
サラが言うので賛同しカーラも一緒に誘う。
ノエリアは読みかけの本を持って行くことにした。サラは編み物、カーラは刺繍をするらしい。焼き菓子やパン、紅茶をバスケットに入れてサラが用意してくれた。
王宮から廊下で繋がっていて外に出ずに行ける温室があり、内部で憩いの時間を過ごせるようにテーブルセットが設置されている。
ノエリアは温室から見える雪景色に目を細めた。
「昨夜、また雪が降ったものね。でも今日は青空で気温も高くなって気持ちがいい」
まだまだ寒くなるので、暖かくして過ごさねば。サラが編み物をしているのを見て、ノエリアもシエルのためにできることならなにか作りたいと考えた。
(編み物、ちょっと苦手なのよね。サラに教えて貰えばできるようになるかな。カーラには刺繍を習いたい)
できるようになればきっと楽しいだろうと考えた。そのとき、温室に届けものがあった。カーラが刺繍の手を止めて受け取る。
カーラは何事にも強気で快活なので彼女といると元気を貰える。
すこし高飛車なところがあるがよく言えばとにかく前進で押しが強いとも言え、そして頭も良かった。だからこちらの気持ちも上昇するのだ。
「ノエリア様、この本のほうが分かりやすいと思います」
種類ある歴史書のなかから、読みやすく分かりやすいものを届けてくれる。読んだことがあるのか先に目を通してくれたのかしおりを挟んでくれるなど、気が利くのだ。
「カーラ、このガルデ王国って場所はここからどれくらいかかるのかしら。前国王が度々訪れるほどお好きだったとあるけれど」
「そうですね、遠いです。雪山を越えてずっと海のほうです。話でしか聞いたことが無いのですけれど、ハマーユという港町があり気候が温暖で過ごしやすいそうです」
「ドラザーヌと友好関係にあり、現在もそれは続いています。あちらは海沿いの温暖な気候を利用して生花産業がさかんですって」
「品質のいい香水が有名なんですよね」
素敵ねぇ。ふたりで歴史書にある挿絵の花束や香水の瓶を見てうっとりしていた。そんな時間も楽しい。
そして、カーラはさすが公爵の娘、おしゃれのセンスもいい。
「ノエリア様は金髪で茶色の瞳だからこっちの濃い色の方が映えます。ドラザーヌは茶色の髪と青い瞳に合うよう誂えたものが多いけれど、ノエリア様は髪と目の色が稀なのだから変えなくちゃ」
ノエリアは侍女たちにされるがまま。もちろん好き嫌いはあるが、似合うと言われればその通りにしていた。
「カーラ様は本当に趣味がいいですよね」
サラも感心するのだ。
「本当。髪と瞳の色に合わせるなんて考えたことがなかった」
「ノエリア様とサラ様も色白だけれど似合う色が違うと思うの」
ああでもないこうでもないと色見本の布を顔に近づけて見てくれている。彼女も楽しんでいるようでよく笑うようになった。
カーラは刺々しさがなくなったぶん、持ち前の元気と明るさでサラはじめほかの侍女たちともうまくやっているようだった。
皆、国王襲撃とヒルヴェラに関する毒草混入事件のことは知らないが、カーラがスタイノ公爵令嬢であったことは知っている。
「ノエリア様は無頓着過ぎるんです。せっかく美人なのに……シエル様は王族専属の仕立屋がいるから流石にお似合いのものばかり、素敵ですよねぇ」
ノエリアは、シエルならばなんでも着こなしているので不満などなかった。
(どの色が似合うとかもよく分からないわ。シエル様は全部素敵に見えるもの)
腕組みをしてひとりで頷くノエリア。
「リウ様も背が高くて、そして濃い色が似合いますよね。青とか」
サラの言葉にノエリアが頷く。カーラもニコニコしながら聞いていた。
「ノエリア様、着替えが終わったら温室でティータイムいかがでしょう」
サラが言うので賛同しカーラも一緒に誘う。
ノエリアは読みかけの本を持って行くことにした。サラは編み物、カーラは刺繍をするらしい。焼き菓子やパン、紅茶をバスケットに入れてサラが用意してくれた。
王宮から廊下で繋がっていて外に出ずに行ける温室があり、内部で憩いの時間を過ごせるようにテーブルセットが設置されている。
ノエリアは温室から見える雪景色に目を細めた。
「昨夜、また雪が降ったものね。でも今日は青空で気温も高くなって気持ちがいい」
まだまだ寒くなるので、暖かくして過ごさねば。サラが編み物をしているのを見て、ノエリアもシエルのためにできることならなにか作りたいと考えた。
(編み物、ちょっと苦手なのよね。サラに教えて貰えばできるようになるかな。カーラには刺繍を習いたい)
できるようになればきっと楽しいだろうと考えた。そのとき、温室に届けものがあった。カーラが刺繍の手を止めて受け取る。