隻眼王の愛のすべて < コウ伝 >
ノエリアは鏡越しにカーラと視線を合わせて微笑みながら櫛を持つ彼女の手をそっと握った。
「カーラ、どうしてリウ様を好きになったの?」
ノエリアが聞くと、カーラは頬を染めてもじもじと話し出す。
「……父が……あんなことがあって、ふさぎ込む時期がなかったわけではありません。不安な中、リウ様は様々な手続きをしてくれました。なにもできないわたしのために」
「リウ様は有能で素晴らしいひとなのだものね」
「仕事ですから、何度もそう言っていました。たしかにそうかもしれません。このように手厚くしてくださるのはシエル様のご意見もあったでしょうし、ノエリア様の優しさも感じたの」
「わたしはなにもしていないのだけれど」
カーラのことは、シエルたちがいろいろと心を砕いたのだろうと思う。ノエリアは実際なにも知らなかったのだから。
「リウ様はわたしにいったの。シエル様はノエリア様と出会って変わった。罪は罪、そしてカーラ殿には未来があるから少しでも助けてやりたいと言っていたと。それを聞いて、本当にわたしはノエリア様にあのような言葉を投げて傷つけたことを後悔したのです」
カーラは目を赤くし涙を堪えているようだった。
「実際にはリウ様がご自分の言葉と思いで、わたしを元気づけてくれた。それが凄く嬉しくて。忘れて前を見ましょう、あなたはなにも悪くないと」
シエルもリウも、本当に心優しきひとなのだなとノエリアは改めて思う。
「わたしのことはリウ様にとっては仕事のひとつなのかもしれません。それでも、わたしは嬉しかった」
自分がシエルのなにかを変えることができていたのなら、そしてカーラにとって良い方向に働いていたのならそれは喜ばしいことだった。
「ノエリア様、わたしを素直で真っ直ぐとおっしゃいますが、こちらから見たらノエリア様の優しくて愛情深いところが魅力的で、わたしにはないものです。その心根にシエル様は心奪われたのでしょうね」
「カーラ……」
カーラの笑顔も美しくて、ノエリアは心が温かくなった。
「ああもう、無駄に悩んだらお腹が空いたわね」
「そうですね、ノエリア様」
「ねぇカーラ。一緒に夕食を食べましょうよ。シエル様に放置されていてつまらないんですもの」
「もちろんです。お腹いっぱい食べましょう。こんな状況だし、いまだけは美味しいものを食べてそしてたっぷり眠るんです」
ふたりであれこれと食べたいものを挙げて笑いあっていたが、ノエリアはふと思いついて手を叩く。
「そうだ。カーラだけじゃなくシエル様にもわたしのとんだ勘違いを披露してしまったんだった」
「うそでしょう?」
「本当」
カーラは呆れた様子で額に手を当てた。
「だからさっき泣いていらしたのですか。くだらない噂なんて、放っておけばいいのです。わたしはなんとも思いません」
「……カーラの逞しさ、見習うわね」
(シエル様に謝らなくちゃ。忙しいだろうからお手紙を書こう)
ノエリアは紙とペンを用意した。夕食までの時間でシエルに手紙を書いてシエルのもとに届けてくれるよう頼むことにした。
「カーラ、どうしてリウ様を好きになったの?」
ノエリアが聞くと、カーラは頬を染めてもじもじと話し出す。
「……父が……あんなことがあって、ふさぎ込む時期がなかったわけではありません。不安な中、リウ様は様々な手続きをしてくれました。なにもできないわたしのために」
「リウ様は有能で素晴らしいひとなのだものね」
「仕事ですから、何度もそう言っていました。たしかにそうかもしれません。このように手厚くしてくださるのはシエル様のご意見もあったでしょうし、ノエリア様の優しさも感じたの」
「わたしはなにもしていないのだけれど」
カーラのことは、シエルたちがいろいろと心を砕いたのだろうと思う。ノエリアは実際なにも知らなかったのだから。
「リウ様はわたしにいったの。シエル様はノエリア様と出会って変わった。罪は罪、そしてカーラ殿には未来があるから少しでも助けてやりたいと言っていたと。それを聞いて、本当にわたしはノエリア様にあのような言葉を投げて傷つけたことを後悔したのです」
カーラは目を赤くし涙を堪えているようだった。
「実際にはリウ様がご自分の言葉と思いで、わたしを元気づけてくれた。それが凄く嬉しくて。忘れて前を見ましょう、あなたはなにも悪くないと」
シエルもリウも、本当に心優しきひとなのだなとノエリアは改めて思う。
「わたしのことはリウ様にとっては仕事のひとつなのかもしれません。それでも、わたしは嬉しかった」
自分がシエルのなにかを変えることができていたのなら、そしてカーラにとって良い方向に働いていたのならそれは喜ばしいことだった。
「ノエリア様、わたしを素直で真っ直ぐとおっしゃいますが、こちらから見たらノエリア様の優しくて愛情深いところが魅力的で、わたしにはないものです。その心根にシエル様は心奪われたのでしょうね」
「カーラ……」
カーラの笑顔も美しくて、ノエリアは心が温かくなった。
「ああもう、無駄に悩んだらお腹が空いたわね」
「そうですね、ノエリア様」
「ねぇカーラ。一緒に夕食を食べましょうよ。シエル様に放置されていてつまらないんですもの」
「もちろんです。お腹いっぱい食べましょう。こんな状況だし、いまだけは美味しいものを食べてそしてたっぷり眠るんです」
ふたりであれこれと食べたいものを挙げて笑いあっていたが、ノエリアはふと思いついて手を叩く。
「そうだ。カーラだけじゃなくシエル様にもわたしのとんだ勘違いを披露してしまったんだった」
「うそでしょう?」
「本当」
カーラは呆れた様子で額に手を当てた。
「だからさっき泣いていらしたのですか。くだらない噂なんて、放っておけばいいのです。わたしはなんとも思いません」
「……カーラの逞しさ、見習うわね」
(シエル様に謝らなくちゃ。忙しいだろうからお手紙を書こう)
ノエリアは紙とペンを用意した。夕食までの時間でシエルに手紙を書いてシエルのもとに届けてくれるよう頼むことにした。