隻眼王の愛のすべて  < コウ伝 >
第四章 光
第四章 光


ドラザーヌとガルデの騎士団および兵士たちは騎士団棟と王宮の大広間に集められ、それでも間に合わないので、空いているサロンやエントランスも収容と休憩のために開放した。
いかに王宮が広くても、ベッドの数など到底足りないので重傷者を優先的にベッドへ運び、軽傷者は簡易な寝床になってしまったが誰ひとり文句を言う者は出なかった。
ここで、準備していた食料と薬などが役に立つことになる。
怪我人の手当て、そして軽傷かつ体力に余裕がある者は介抱や食事の準備を率先して行っていた。

うち、犠牲になったものは手厚く葬った。

重傷者は王都の医療施設に搬送されていき、要請があった王都や周辺町村から医者が駆けつけて王宮内で治療を行った。ガルデ国王からも数日かかって様々な救援物資や人員派遣があった。
ノエリアもサラやカーラ、マリエたちも数日間てんてこ舞いで働いた。

北側の森は心配された延焼をせずに、楕円に焼け野原になっていた。

状況が落ち着いた頃、マリウス率いるガルデ騎士団が引き上げることになった。

見送るために、シエルとノエリア、リウたちそしてドラザーヌの騎士団が外で整列している。
ドラザーヌのために戦ってくれたガルデ軍を本来なら盛大に見送るべきところだが、そのようなことは遠慮したいとの申し出があったからだ。

「それでは、大変に世話になりました」

マリウスは皆と握手を交わしながら、ノエリアの前に立つ。

「ノエリア様、お元気で。陛下とお幸せに」

「マリウス様も、どうかお元気で」

優しい笑顔を浮かべたマリウス。シエルが狼ならマリウスはライオンのようだとふたりで笑った温室での時間を思い出していた。
隣に立つシエルに視線を向けたマリウスは、胸に手を当てて敬意を表する。

「……陛下、お元気で」

「マリウス、ありがとう。世話になった。このことはドラザーヌの歴史に刻まれ我々が生きている間、いなくなったあともずっと語り継がれるだろう」

シエルより体が大きく筋肉質で短い顎髭をたくわえ硬そうな茶色の髪がたてがみみたいに見えるマリウス。
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