種も仕掛けも
「名残惜しいですが、最後のマジックです!」
再び登場した司会者がそう告げると、ウサギはステージからひらりと降りて、客席へやってきた。
手をくるくると回すと、小さな花が現れる。それをそのまま、目の前に座るお客さんへ差し出した。
ーーすごい。これはお金を取れるレベルだろう。
地方のショッピングセンターも侮れないなとしみじみ思っていると、いつの間にかウサギは私の前にいた。
そうして、他の小さなお友だちにするのと同じように、どこからか花を出してこちらへ向けてきたのだ。ご丁寧に片膝まで着いたその姿が、まるで海外ドラマのプロポーズシーンみたいで心臓がうるさいほど騒ぎ始める。
相手は子ども向けのショーを演出する、ウサギの着ぐるみだというのに。
「あ、ありがとう」
そっと花束に手を伸ばす。
手品用の、小さな造花の花だ。
ウサギは私が受け取ったことを見届けると、ひらりとまたステージへ戻る。そこで閉会のアナウンスが流れ、ひと時のショーは幕を閉じた。