契約結婚なはずの旦那様に気づけばグイグイ迫られてます。
件のアンナ嬢、どうやらずいぶん以前よりディミタス候爵にご執心であれこれアプローチを重ねていたらしいが一行に相手にされてはいなかったとか。

真実を知るリーシャからすればまあ当然でしょうという話。

なんといっても別にもっと美人な恋人がいるのだから。

家柄的には問題はなくとも派手好き容姿そこそこ性格よろしくないご令嬢にフラフラするはずがないししてはならない。
ラブロマンスは一途でこそ王道で美しいというもの。

けれど敵(アンナ嬢)もなかなか厄介なもので。

候爵本人に正攻法で相手をされないなら、外堀を埋めて強引に妻の座を手にしようとしているのだ。

まず、リーシャが拾ったアンナ嬢の噂の一部は、故意に流されているものである。

ディミタス候爵とアンナ・カレーリナ嬢は水面下で婚約及び結婚の話が進められている、と。
ま、実際には一方的にだけれど。

あとは候爵がこの年まで独身だったのは実はアンナ嬢が結婚適齢期になるのを待っていたからだとか。
(それなら二年ほど前から入っているのだが)
二人はずいぶん前からひっそり逢瀬を重ねているのだとか。
(ひっそりする意味なくない?)

アンナ嬢の流す噂というのはそんな願望と妄想とツッコミどころ満載でとてもわかりやすく、聞いてすぐ「あ、これアンナ嬢だな」と、なるものだ。

それでもそういった噂が広く流されれば、周囲の空気も少しは変わる。少なくともアンナ嬢の家が候爵家であるだけに他の令嬢たちへの牽制にはなる。

「ディミタス候爵の妻になるのはこのワタクシよっ!」

ってね。

とはいえ噂だけなら候爵本人が否定すればいいだけのように思われるが、アンナ嬢の本気度と言おうか執念はそれだけではすまなくて。

本気でガッツリ外堀を埋めていっている。


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