魔導士(仮)の小ネタ。
「レイは甘いものが好きなんですか?」
「そうね、人並みには好きだわ。でもパンケーキが目的じゃないの。わたしはあなたと一緒にいたいのよ。」
「レイは私のことが大好きなんですね」
「ええ、大好きだわ。すごく。たいせつでもある。」
冗談で言ったつもりの言葉を笑顔で返され、愛梨は、思わず赤面した。容姿端麗なレイの笑顔でのそんな言葉は破壊力が大きすぎる。でも。
「わたしって、やっぱりお姉さんに似てるんですか?」
レイが自分を気にかける理由なんてこれだけだ。自分が姉と同じ力の持ち主だから。同じものが感じられるから。
「似てないわ。」
「えっ!?」
愛梨は思わず大きな声を出し、レイの顔をまじまじと見た。
「似てないわよ。顔も、声も、性格も全く。お姉ちゃんはあなたみたいにド天然のドジではないもの。」
くすくす笑いながらレイが言う。
「え、じゃあ、なんでレイはわたしのことを気にかけるんですか?銀の魔導士でありながら力は強くないし、レイと釣り合うようなことはないもないのに…。」
「あなたはわたしの恩人だから。」
自分で言っておきながら虚しくなって俯く愛梨に、レイは言う。
「あなたが頑張って抗ったおかげで影郎の力は弱まった。わたしの大切な大切なギルドを守ってくれたのも、あなたの力。あなたが作った光。最後にわたしの命に灯火をくれたのもあなた。あなたはわたしの恩人なの。心から尊敬している。」
こんなに愛するに値する人なんて、そうはいないと思うけど。と笑うレイ。
「わたしはあの時あなたに全力で惚れたの。」
「レイが、わたしに?惚れた!?」
「惚れたわ。」
驚き、零れそうなほど瞳を見開く。愛梨にとってずっと憧れで、届かない存在で、何度も救われてきたレイに、今、惚れた、と言われた。こんなに幸せなことがあるだろうか。
「優大に好きだって言われた時より嬉しいかもしれない…」
「それは優大が可哀想ね」
レイは無垢に笑う。
そんな姿は、既に100年以上生きてきた者には見えない。更に過去には幾度かの戦争と、とんでもなく重くて悲しい経験があるなんてとても思えないようなものだった。

< 3 / 11 >

この作品をシェア

pagetop