散りゆく花泥棒と夜明けを待つ花嫁
「え、ここ?!」
倉庫みたいな……いや倉庫だ。お魚の匂いがする倉庫の前の駐車場に軽トラックを止めると、倉庫の隣の小さな建物に案内された。
平屋のような小さな店は、入るとカウンター席が十席ぐらいの小さく狭い空間だった。
カウンターとキッチンの間の段差に無料で食べられる漬物が入った大きなお皿が並べられ、学校にあるような黒板に本日のメニューが書きなぐられていた。
本日は鯵のフライか、烏賊の天ぷららしい。
「今日は何も釣れなかったんだ」
「そうなの?」
「烏賊は冷凍した方が甘くなるし、鯵が釣れたんなら刺身にして提供してくれる。今日は外れだ」
「聞こえてるぞ、省吾」
キッチンからおしぼりが二つ投げられ、省吾がそれをキャッチした。
「今日は売れないような魚が無かったんだ。完売したから、お前らに美味しい魚が届かなかったんだよ。残念だな、おこぼれにあずかろうとしたガキめ」
キッチンから顔を出した店長は、日焼けして真っ黒な肌の、顎鬚が似合う豪快に笑うおじさんだった。
「おいおい、女を誘う場所じゃねえぞ。こんなところに連れてきて、お前振られるんじゃねえか」
「うるさい。さっさと烏賊の天ぷら定食二つ用意して」
省吾は私の分まで勝手に注文するとカウンター席に置いてあったお皿に、おかずを載せて私の前に置いた。
「オヤジは暑苦しいやつなんだけど、ここのきんぴらと小鯵の南蛮漬けは美味しいんだよ」
「暑苦しいとはなんだ。ダンディと言え」
お玉を振り回すおじさんに爆笑しつつ、きんぴらを食べたが甘さが絶妙で、出汁の味がしっかりしていてとても美味しかった。
そしてすぐに出てきた烏賊の天ぷらにはたっぷりとタルタルソースがかけられていた。
「ここのおじさん、ほんと適当なひとでさ。玉ねぎを水に浸して苦み抜きとかしないから、玉ねぎの辛みが強いタルタルソースなんだけど、美味しいよ」
「ほうほう。確かに美味しそう」
倉庫みたいな……いや倉庫だ。お魚の匂いがする倉庫の前の駐車場に軽トラックを止めると、倉庫の隣の小さな建物に案内された。
平屋のような小さな店は、入るとカウンター席が十席ぐらいの小さく狭い空間だった。
カウンターとキッチンの間の段差に無料で食べられる漬物が入った大きなお皿が並べられ、学校にあるような黒板に本日のメニューが書きなぐられていた。
本日は鯵のフライか、烏賊の天ぷららしい。
「今日は何も釣れなかったんだ」
「そうなの?」
「烏賊は冷凍した方が甘くなるし、鯵が釣れたんなら刺身にして提供してくれる。今日は外れだ」
「聞こえてるぞ、省吾」
キッチンからおしぼりが二つ投げられ、省吾がそれをキャッチした。
「今日は売れないような魚が無かったんだ。完売したから、お前らに美味しい魚が届かなかったんだよ。残念だな、おこぼれにあずかろうとしたガキめ」
キッチンから顔を出した店長は、日焼けして真っ黒な肌の、顎鬚が似合う豪快に笑うおじさんだった。
「おいおい、女を誘う場所じゃねえぞ。こんなところに連れてきて、お前振られるんじゃねえか」
「うるさい。さっさと烏賊の天ぷら定食二つ用意して」
省吾は私の分まで勝手に注文するとカウンター席に置いてあったお皿に、おかずを載せて私の前に置いた。
「オヤジは暑苦しいやつなんだけど、ここのきんぴらと小鯵の南蛮漬けは美味しいんだよ」
「暑苦しいとはなんだ。ダンディと言え」
お玉を振り回すおじさんに爆笑しつつ、きんぴらを食べたが甘さが絶妙で、出汁の味がしっかりしていてとても美味しかった。
そしてすぐに出てきた烏賊の天ぷらにはたっぷりとタルタルソースがかけられていた。
「ここのおじさん、ほんと適当なひとでさ。玉ねぎを水に浸して苦み抜きとかしないから、玉ねぎの辛みが強いタルタルソースなんだけど、美味しいよ」
「ほうほう。確かに美味しそう」