散りゆく花泥棒と夜明けを待つ花嫁
 私も前を見たり窓の外を見た。途中、省吾が肩を震わせ出したとき、頭を撫でないようにずっと真っ暗な外を見続けた。
 頬を伝う痛みを持つ省吾が、冷たい人なわけない。
 選べない環境の中、偶々ハズレな親を引いた子どもだ。
 二十八になって分かったよ。完璧じゃないまま私たちは大人になって、完璧じゃないゆえに悩みながら結婚して子どもを育てて、仕事して。
 完璧じゃないから迷うから、愛情が押し出てしまうこともあって、子どもと一緒に成長していくこともある。
 省吾の両親は、省吾と一緒に成長しなかった。してくれなかった。完璧じゃないのに。
 私は心の中であの人たちをハズレだと思っているのだ。
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