気がつけば、恋のはじまり
「は、離して・・・っ」

至近距離に耐え切れず、力いっぱい彼の右手を振り払う。

けれど、無理な力を出しすぎたのか、フラリとよろけ、宮本くんに抱き留められた。

「・・・っと」

「・・・!!」

「病み上がりが無理すんな」

「だ、だって、宮本くんが・・・!」

Yシャツが、私の頬に触れている。

離れたいのに、身体に力が入らない。

「・・・オレが、なに?」

「だ、だから・・・へんなこと言ったりするから」

「・・・へんなことって」

声音が変わった。

ドキリとなって見上げると、怒った顔と目が合った。

「こっちは毎度本気だけど。茶化して受け取んないのはそっちだろ」

「・・・・・・だって・・・」

反論できない。

彼の言葉は、きっといつも本当だ。

だけど、あまりにも普通に甘い言葉を何度も言うから・・・。

「茶化してる、とかではなくて・・・」

傷つけた?

そういうつもりで言ったんじゃない。

ただ、恥ずかしい気持ちでいっぱいで、どうしたらいいかわからない。

嫌だっていうわけでもなくて、迷惑だとも思ってないけど・・・。


(だけど・・・・・・って、あれ?)


そこまで思考を巡らせて、私ははっと気がついた。

もしかしたら、私は、自分の気持ちに混乱しているだけかもしれない。

「・・・じゃあ、家まで送らせて」

抱きしめられた腕の中、宮本くんの言葉が響く。
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