魔法の鍵と隻眼の姫
昼近くに起きたミレイアはすっかり熱も引いて起き上がれるようになった。
時折黒い物が包みこもうとしているのを見たがすぐに消えてしまうためラミンは首を捻りながらも今日はゆっくりして明日旅を再開しようと決めた。

ミレイアを休ませてる間にラミンは一座の人間に言い伝えについて何か知らないか聞いて回ったが誰も知らないという。

アマンダは誰に言い伝えの事を聞いたのか?
問い質したいところだが朝の一件でアマンダはラミンの事を避けているのかあまり姿を現さない。

コジットにも聞いたが、「そんな話はここでは聞いたことないな?ああ、シエラ王国の小さな村に古い貴重なものがあると聞いたことはあるかな?」と言う。

シエラ王国。
確かミレイアが仕入れた話に出てきた。
もしかしたらバットリアの話は空振りで結局シエラ王国に行かなければいけないかもしれない。

ミレイアの意見を蔑にしてバットリアに来たことは間違いだったか…。
気が付けばノアローズを出立してから2週間以上が経とうとしている。
あまり時間はないのに無駄足を踏んでしまった。しかし後悔しても経ってしまった時間は戻せない。

諦めのため息をついたラミンは黒々と渦巻く雲を見上げた。

夕刻、ミレイアの食事を貰ってテントに戻ると起き上がっていたミレイア。

「ラミン、ノニの姿が見えないんだけど…」

不安そうにするミレイアに食事の乗ったトレイを渡すと椅子を引いて隣に座った。

「どっか遊びにでも行ってるんじゃないか?結界は張られたままだから近くにはいるだろ?」

「汗でべたべただから温泉に入りたいんだけど…ノニに結界を張ってもらいたかったのに…」

「俺が外で見張っててやるから大丈夫だろ?それより早く食え、少しでも体力付けとかないと明日旅に出れないぞ?」

「うん…わかったわ」

ノニを心配しながらもスープに口を付けたミレイアをじっと見ていたラミン。
それに気づいたミレイアはスプーンを口元から離した。

「ラミン…そんなじっと見られたら食べ辛いわ」

「お、悪い…俺は温泉に他の奴がいないか見て来るわ」

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