魔法の鍵と隻眼の姫
「ラミン…」

「アマンダか。風呂か?悪いが今小娘が入ってるから後にしてくれないか?」

戸口に背を預け腕を組み立っていたラミンはアマンダが何も持たずに来てることに気が付いた。

「ううん、違うわ。あの子病み上がりで大丈夫?あたし見てこようか?」

珍しくミレイアを気遣う言葉に目を見開いたラミン。
しかし確かに様子を見に行った方がいいかもしれない。
奥で倒れていたら助けも呼べないだろう。
ここは女のアマンダに頼んだ方がいい。

「…ああ、そうだな。頼めるか?」

「もちろんよ」

快く返事をしたアマンダに戸口を開け中に促した。

「何かあったらすぐに呼べ」

頷くアマンダを見てほっとすると戸を閉めた。

ニヤリと笑うアマンダの手には…。



だんだんと体が重く気怠くなってくるのを感じたミレイアは早々に湯船から上がって新しい服に着替えた。
髪を拭き眼帯に手を伸ばすとサッと誰かに眼帯を奪われた。
咄嗟に右目を押え振り返るとアマンダが忌々しげにミレイアを睨んでくる。

「あんたみたいな片目の女のどこが良いの?こんな宝石の付いた眼帯なんかして…これでオシャレでもしてるつもり?」

「アマンダさん…?」

睨んでくるアマンダの周りには黒いオーラが纏わりつき吊り上がった目は美人を台無しにしていた。
握りしめてる眼帯からびりびりと電気が走ってるはずだがものともしてない。

「その眼帯を返してください」

「あんたさえいなければ!」

手を差し出すミレイアをギッと睨みバシッと手を叩くように払った。

「いっ!!」

叩かれた手に痛みが走り思わず右目を押えていた手を外した。

滴り落ちる血。
アマンダを見ると手には小さなナイフが握りしめられていた。

「あんた…その目」

アマンダは見てしまった。

ミレイアの右目。
左目の紫と違い赤黒く怪しく光る右目。
そこから黒い霧のようなものがあふれ出ようとしていた。

ミレイアは咄嗟に目を伏せたがもう遅い。

ガンガンと頭痛が起き右目が燃え上がるように熱い。

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