魔法の鍵と隻眼の姫
「ば、化け物…」

口にしたアマンダは後ずさりするとふと思い出す。
ノアローズ王国の異色の目を持つ王女。

「あ、あんたまさか…この世界に災いを持ち込んだ王女…」

「そ、その眼帯を返してください…早く!」

血塗られた手を差し出してくるミレイアを恐ろしい物でも見るようにアマンダは後ずさりする。
必死に返せという眼帯に目を向けた。
さっきからびりびりと痛みが掌に伝わってくる。
それをゆっくりと差し伸べてくる手の上に持ってこようとして止めた。

「あんたみたいな化け物がラミンと一緒にいるなんて…許さないわ。こんなもの!」

眼帯を引っ込めるとナイフを当て一気に切り裂いた。

「きゃあああああっ!!」

ぽろっと落ちる宝石。
その途端に苦しみ悶絶するミレイアの右目から黒い霧のようなものが噴き出してくる。

「どうしたっ!」

悲鳴を聞き付け飛び込んできたラミンは黒い霧に包まれうずくまっているミレイアに絶句した。

「ラミン!こいつあの災いをもたらす王女だったのよ!見てよこの禍々しい黒い姿を!ラミンは騙されてたのよ!」

ラミンに縋りつき訴えるアマンダを押しのけゆっくりとミレイアに近づいた。

「ラミン!近づいたら駄目よ!殺されるわっ!」

必死に止めようとするアマンダを見やるとその足元に切り裂かれた眼帯と宝石が転がっている。

「お前、何をした?」

低く唸るような声を出し凍りつきそうな冷たい目がアマンダを見下す。

「な、何もしてないわ、急にこの子が苦しみだしただけよ…あたしは、何もしてない!」

怯んで苦しい言い訳をするアマンダの手を払い除けるとミレイアを見た。

「小娘…」

「こ、来ないで…!ああ!ノニはどこ!?結界を…!ううああっ」

苦しみ悶えるその手は血にまみれ右目からは抑えていても止めどなく黒い霧が噴き出している。

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