魔法の鍵と隻眼の姫
一瞬戸惑いながらも黒い霧に入って行くと重く圧し掛かるような感覚に気が滅入りそうになる。

「こ、ないでぇ…」

何とか近づけさせないように後ずさりするミレイアの前に跪くとその身を抱き締めた。
離れようと暴れられきつく抱きすくめる。

「ごめん、俺が悪かった…」

アマンダを引き入れてしまったのは自分だ。
何から何までアマンダにかかわることで小娘に辛い思いをさせてきた。
その極めつけがこれか…。

抱きしめると余計に重く言い知れぬ何かが入ってくる。

これは負の感情が集約されたもの。
それを封印していた眼帯が引き裂かれ溢れ出てきていた。

「こんなものをお前は身に宿してたのか…?」

「ううっ離れて…ラミン…あなたに何かあったら…!」

「離さねえ…俺に、何とかできないのか…?」

抱きしめていると祠の時のように胸が燃え上がるように熱く苦しい。
ミレイアも同じ苦しみを味わってるのだと思うと歯を食いしばり耐えた。

「…う…うぅ……」

力尽きたようにミレイアの手が落ちる。

黒い霧の中で抱き合うラミンとミレイアを見て恐ろしくなってきたアマンダは戸口へと逃げた。

「み、みんなに知らせないと!災いの王女がここにいるって、みんな殺されるって!」

外へ出たアマンダは黒い何かに前を阻まれた。

「ぐっ…!」

首を掴まれ足が浮くほど持ち上げられたアマンダは中へとまた引き入れられる。

「だから何人たりとも同行を許さぬと言っただろうに…」

ドサッと降ろしたアマンダは気絶していた。

「ジジイ・・・」

息も切れ切れに見上げると現れたのはフードを深く被ったモリスデン。
その後ろからセイラスも姿を現した。

「言うことを聞かぬからこういうことになるのじゃ。愚か者が!」

「いでっ!」

躊躇せず黒い霧に入ってきたモリスデンは持ってる杖でラミンを遠慮せず殴る。

涙目のラミンは何も言えない。
モリスデンがぶつぶつと何かを唱え手をかざすと黒い霧が晴れるように消えていった。

「ラミン、ミレイアをこちらへ」

セイラスが近づき跪くと手を差し伸べる。

「い、嫌だ…。頼む、こいつを何とか助けてくれ」

セイラスの手を拒否するとモリスデンを見上げ懇願する。

「助けるためにもセイラスに渡すのじゃ。それと…この女、素性を知られてしまった以上殺すしかない」

「殺す!?」

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