魔法の鍵と隻眼の姫
驚くラミンは倒れているアマンダを見つめる。

「今、騒がれてしまっては救えるものも救えぬ。民衆が直接ミレイアに向ける敵意ほど恐ろしい物はない」

今までは本人を知らない民衆が噂程度で王女の事を恨み嫉んできたが王女がここにいると分かるとその敵意は直接ミレイアに注がれる。
それは命を狙われるだけでなくミレイア自信を苦しめる。
このアマンダのように…。
ぎゅっとミレイアを抱き締めたラミンはこんな恐ろしいことになろうとは想像出来ていなかった。

「何とか命だけは助けてやれないのか?そもそも同行を許したのは俺だ。俺の間違った判断でアマンダはこうなってしまった。全部おれが悪いんだ!頼む」

悲痛な面持ちでモリスデンを見上げるラミンを冷めた目で見るモリスデンは髭をいじり考えるようなそぶりをする。

「フム…そうじゃな。…よかろう、今回はミレイアに関する記憶を全て消すだけにしよう。その代りラミン、お前には全て終わった後わしの言うことを何でも聞いてもらうぞ?」

「わかった、何でもする。命だけは助けてくれるんだな?」

「約束しよう」

ホッとしたラミンは知らずに体に力が入ってることに気が付いた。
抱きしめているミレイアはぐったりしている。
力を抜き頭を撫でてやるとふと思った。

「恩に着る。…記憶を消すなんてできるのか?」

「そんなこと、雑作もないわ」

フォッフォッフォッと笑うモリスデンにラミンは気が付いた。

このジジイ、殺すなんて言っといて最初から記憶を消すだけのつもりだったな?

何でも言うことを聞くなんて変な約束をしてしまった。

訝しげにモリスデンを睨むが本人は知らん顔でアマンダを担ぎ上げた。

「ではわしはこやつと周辺の奴らの記憶を消してこよう。セイラス、後は頼んだぞ」

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