魔法の鍵と隻眼の姫
「待ってくれ」

出て行こうとするモリスデンを呼び止めたラミン。

「もう一つ頼む。俺の記憶もアマンダから消してくれ」

「…いいのか?」

セイラスが驚いたように言う。

「ああ、消してくれ。俺のせいでこいつも、アマンダも苦しめた。俺の事を忘れればアマンダも…元に戻るはずだ」

「……よかろう。この借りは高く着くぞラミン」

フォッフォッフォッと高笑いをして出ていくモリスデン。

本来明るく天真爛漫だったアマンダ。
お互い自由な恋愛を好み、ラミンに執着し嫉妬するような性格ではなかった。

彼女の変化に気付いていれば…いや、自分と出会わなければ酷い目にも合わなかった筈だ。

ため息をついてアマンダを見送ったラミンをじっと見つめていたセイラスはもう一度手を差し伸べた。

「さあ、ラミン。ミレイアを」

「いや、俺が連れてく」

立ち上がろうとミレイアを抱えるが体がいうことを聞かない。
倒れそうになるところをセイラスが支えた。

「ラミン、君も黒い霧にやられて体が思うように動かないだろう?それに…」

諭すように言うセイラスはキッとラミンを睨み声を低めた。

「直接はあの女性のせいだがラミンがミレイアを苦しめたことには変わりない。僕は許さないよ?」

「……セイラス……」

目を見開き何も言い返せないラミンにセイラスはふっと笑い掛けた。

「昔からミレイアの精神安定剤代わりだったんだ僕は。だから大丈夫、きっとミレイアは元のように元気になる」

「……ああ、わかった」

諦めたラミンは腕を解きミレイアをセイラスに託した。

「さあ、ミレイア、僕のところにおいで」

「お兄さま…」

うっすらと目を開けたミレイアはセイラスを見るとはにかみ甘えるように抱きついた。
それを苦虫を噛み潰したように渋い顔で見ていたラミン。
兄妹とは言え見たくない光景だ。

「取り合えずミレイアを休ませたい」

「……なら借りてるテントに…」

立ち上がったラミンは重い体を引きずるようにミレイアを抱くセイラスを伴いテントに向かう。
< 106 / 218 >

この作品をシェア

pagetop