魔法の鍵と隻眼の姫
更に問われるとラミンはあの黒い霧の重苦さに支配された時の事を思い出す。
あれは確かに負の感情。
自分の中に流れ込んできても耐えるのがやっとだった。

「負の感情……あれはこいつだけの感情か?」

ゆっくり首を振るセイラスは憂い顔をミレイアに向けた。

「ありとあらゆる人々の感情がミレイアの中にある。全てをミレイアが請け負っている」

「あんなの身に宿してこいつは大丈夫なのか?」

黒い霧が吹き出した時のミレイアの苦しみ様は尋常じゃなかった。
普段からあの苦しみを受け続けてるのだろうか?

「大丈夫なようにわしが封印している。あれが吹き出せば先程のように苦しみ悶え仕舞いには死ぬ」

唱え終えたモリスデンが答えるとミレイアの横に立った。
死ぬ…それを聞いたラミンは呆然とモリスデンを見上げた。

「この眼帯はミレイアの命綱じゃ、努々忘れるでないぞ」

振り向き重々しく言うとミレイアの額に手を当てそこが光り出す。
セイラスはミレイアの手を握りながら見守った。

「よしこれでよかろう」

モリスデンが手を離すと青白かった顔色は血の気が戻り頬に赤みが差してきた。
ホッと胸を撫で下ろすセイラスを見て這うようにベッドに近づいたラミンはモリスデンを押し退けミレイアの顔を覗き込む。

「……」

既に眼帯がはめられてるが穏やかな寝顔に安堵したラミンは崩れるようにベッドに突っ伏す。

「次はお前じゃ」

「ぐえっ!」

突っ伏すラミンの襟を引っ張るモリスデン。
首を絞められるような形になったラミンは潰されたような声を出す。

手荒な扱いをするモリスデンに唖然としたセイラスはプッと吹き出してしまった。
兄のように慕っていたラミンの憐れな姿に少し同情しながらもスッとした気分になる。

僕はミレイアを苦しめるラミンを許さないのはほんとだよ?少しモリーに懲らしめてもらうといい。

うぎゃ!うおっ!?と悲鳴を上げるラミンを横目に見ながらミレイアを撫で心の中で問いかけた。

ミレイア、これが本当に運命だというのなら受け入れる覚悟は出来てるかい?
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