魔法の鍵と隻眼の姫
「話を戻そうか。まずはミレイア王女をなぜ恐れぬのかだが、私は正しい歴史を知っている。ここはその舞台となった土地だからな。そして、ノアローズ王家とこのシエラ王家は同じ祖を持ついわば親戚だ」
「え、そうなんですか?」
初耳のミレイアは目を丸くする。ラミンも知らなかった。
「約1200年前の事だから知らぬ者も多かろう。ノアローズでは隠された事実かもしれぬ。2000年前の人間が魔物から自由と平和を勝ち取ってから1200年前の出来事を知ることがこの災いに打ち勝つ鍵となる」
「2000年前の事は聞いていますが、1200年前の出来事とは?」
「その詳しいことは明日、アンロ・カリミン寺院で詳しく聞くといい。ドリスター家も大いに関わることだ」
「ドリスター家も?」
「そう、君のルーツが解るだろう」
血を受け継ぐもの。
ふと祠で聞こえた声を思い出したラミン。
きっと自分のルーツを知ればこの胸にある痣の事も解るだろう、そんな確信が脳裏を過ぎった。
1200年前までは国はノアローズ王国一つだったという。
長い歴史の中で少しづつ歪が生じ度々戦が起こり国が8つに割れた。
その時期空に渦巻くは人の妬み憎しみが蓄積された黒い雲。
そう、前にも同じ事が起こっていた。
「何百年もかけて雲は見えないながら徐々に確実に増えていった。それが目に見えるころ災いが起こる、魔女はそう言いたかった。魔女は人間が起こす災いに忠告をしたに過ぎない。そしてその災いに打ち勝つ救世主を示した。それがミレイア王女とラミン殿の二人だ」
思わず見つめ合ったミレイアとラミン。
「何百年もかけて人間が生んだ災いだというのなら、なぜ異色の目を持つものが災いをもたらすと伝えられた?いわば救世主の王女が蔑まれる言われは無いはずだ」
憤りを隠せず口ぶりが乱暴になるのを気づかないラミンは王に食って掛かる。
そんなラミンと呆然とするミレイアを見た王は悲しげな眼をする。
「それも己が招いた災いだと認めたくない人間の作った作り話。事実は葬り去られ都合のいい事だけを残し、たった一人、異色の目を持つものに全てを押し付けた。そして人間にとって脅威となる話は直ぐに伝わる。それが嘘だと言っても恐怖に慄く人々はそれを信じない」
愚かなことだと目を伏せる王。
恐れられ命を狙われた日々は何だったのか?
ミレイアは生まれた時からの事を思い起こす。
それでも、自分を守り慈しんでくれた両親と兄たちとモリスデンがいた。
「正しい伝承を広めようとしても何故かかき消されてしまう。ミレイア王女には辛い思いをされたことだろう」
「…いいえ、世間で何と言われようと私の側には優しいお父様とお母様、お兄様たちが居ました。それに、お師匠と…ラミンも。私を信じ守ってくれた者がいるから私は幸せです」
穏やかな横顔を見せるミレイアにラミンは毒気が抜けたように怒りが収まっていく。
視線に気づいたミレイアが横を向くとじっと見てくるラミンと目が合った。
その瞬間にドキリと胸が打つ。
お互いに目が離せないでいた。
王はそんな二人を見て目を細め微笑んだ。
「え、そうなんですか?」
初耳のミレイアは目を丸くする。ラミンも知らなかった。
「約1200年前の事だから知らぬ者も多かろう。ノアローズでは隠された事実かもしれぬ。2000年前の人間が魔物から自由と平和を勝ち取ってから1200年前の出来事を知ることがこの災いに打ち勝つ鍵となる」
「2000年前の事は聞いていますが、1200年前の出来事とは?」
「その詳しいことは明日、アンロ・カリミン寺院で詳しく聞くといい。ドリスター家も大いに関わることだ」
「ドリスター家も?」
「そう、君のルーツが解るだろう」
血を受け継ぐもの。
ふと祠で聞こえた声を思い出したラミン。
きっと自分のルーツを知ればこの胸にある痣の事も解るだろう、そんな確信が脳裏を過ぎった。
1200年前までは国はノアローズ王国一つだったという。
長い歴史の中で少しづつ歪が生じ度々戦が起こり国が8つに割れた。
その時期空に渦巻くは人の妬み憎しみが蓄積された黒い雲。
そう、前にも同じ事が起こっていた。
「何百年もかけて雲は見えないながら徐々に確実に増えていった。それが目に見えるころ災いが起こる、魔女はそう言いたかった。魔女は人間が起こす災いに忠告をしたに過ぎない。そしてその災いに打ち勝つ救世主を示した。それがミレイア王女とラミン殿の二人だ」
思わず見つめ合ったミレイアとラミン。
「何百年もかけて人間が生んだ災いだというのなら、なぜ異色の目を持つものが災いをもたらすと伝えられた?いわば救世主の王女が蔑まれる言われは無いはずだ」
憤りを隠せず口ぶりが乱暴になるのを気づかないラミンは王に食って掛かる。
そんなラミンと呆然とするミレイアを見た王は悲しげな眼をする。
「それも己が招いた災いだと認めたくない人間の作った作り話。事実は葬り去られ都合のいい事だけを残し、たった一人、異色の目を持つものに全てを押し付けた。そして人間にとって脅威となる話は直ぐに伝わる。それが嘘だと言っても恐怖に慄く人々はそれを信じない」
愚かなことだと目を伏せる王。
恐れられ命を狙われた日々は何だったのか?
ミレイアは生まれた時からの事を思い起こす。
それでも、自分を守り慈しんでくれた両親と兄たちとモリスデンがいた。
「正しい伝承を広めようとしても何故かかき消されてしまう。ミレイア王女には辛い思いをされたことだろう」
「…いいえ、世間で何と言われようと私の側には優しいお父様とお母様、お兄様たちが居ました。それに、お師匠と…ラミンも。私を信じ守ってくれた者がいるから私は幸せです」
穏やかな横顔を見せるミレイアにラミンは毒気が抜けたように怒りが収まっていく。
視線に気づいたミレイアが横を向くとじっと見てくるラミンと目が合った。
その瞬間にドキリと胸が打つ。
お互いに目が離せないでいた。
王はそんな二人を見て目を細め微笑んだ。