魔法の鍵と隻眼の姫
話を終え、王と晩餐を共にした後今夜は王城に泊まるようにと部屋を用意された。
旅の疲れをお風呂で癒し、窓を開けの外を見ていたミレイアは控えめにドアがノックされたことに気が付いた。

「誰です?」

「俺だ」

「…どうぞ」

俺だ、で終わらすラミンにクスリと笑い答えるとまた外を見ていた。

「…お前、そんな恰好で風邪ひくぞ?」

薄暗い部屋にミレイアは上着も羽織らず薄いネグリジェのまま窓辺に立っている。
ラミンは呆れながらソファーに掛けてあったショールを手に取るとミレイアに近づきそっと肩に掛けた。

「ありがとう。ねえラミン、ここからは月が見えるのよ?」

掛けられたショールを押え左横に立つラミンに外を見るように促す。
空には雲間から満月に近い月が見える。
周辺をノニが飛び回っていた。

「ここはあのジジイじゃなく魔女の加護があるから森も枯れずに残ってるとは驚きだったな」

モリスデンの居る迷いの森は魔女の住処でもあった。
だからその森に続くこの建国された1200年前から魔女に守られているのだと国王は言っていた。

「ラミンったらまたモリ―の事を…まあいいわ」

呆れため息をつくミレイアを見たラミンは徐に口を開く。

「お前、検問でなぜ王に会うと言った?国王の前に行って名乗りを上げたら今どうなってたかも分からないんだぞ」

咎めるように声を低くするラミンに俯いたミレイア。

「なぜって、ここで名乗りを上げないと先へ進めないような気がしたから…。それに、私はノアローズの王女であることを誇りに思ってる。国王様の前で自分の素性を隠し通すなんて出来ないわ」

見上げてくるミレイアの瞳は凛としていて生まれながらの王女であることを思い知らされる。
一瞬言葉に詰まったラミンはペシッとミレイアにデコピンをお見舞いした。

「イタッ!何するのよ!」

痛いおでこを押えながら睨むとラミンは腕を組み鼻で笑う。

「ふん!そう言いながら震えていたくせに偉そうなこと言うな」

ぷくっと頬を膨らませたミレイアはプイッと顔を逸らす。

「ラミンが…」

「あ?俺が何だって?」

「何があってもラミンが守ってくれると思ったから私は自分を貫いただけよ」

「……」

確かに謁見の間で逃げる事だけ考えていた。
必ず王女を守り逃げ果せる自身もあったが。

「まあ、今回はいい方向に行ったから許してやる。今度勝手な真似したらお仕置きだな」

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