魔法の鍵と隻眼の姫
翌朝、少しでも休める時は休んだ方がいいと国王に言われ馬車を用意してくれていた。
護衛も付きウォルナーを引き連れてくれると言う。
その護衛にデスタとブライアンが名乗りを上げてくれたそうだ。

「ラミン!元気にしてたか?やっと帰って来たと思ったら、また行くのか?」

「ああブライアン、お前も元気そうで何よりだ」

「お役目はいつ終わるんだ?マリア達が寂しがってたぞ?」

「ああっ!?」

ガシッと固い握手をしてにこやかに挨拶を交わしていたブライアンは何気に女の子の名前を出すとラミンが急に焦り出した。

「そうそう!ローズマリーとジャネットもいつラミンは帰ってくるのかしつこく聞いてくるから煩くって!」

「おい!あいつらは別にどうでもいい!」

追い討ちをかけるようにデスタが言うもんだから焦りまくるラミンはちらりと後ろに立ってるミレイアを見た。
フードを深く被りピクリとも動かないミレイアに、なに気にしてんだ俺!と我に帰り、落ち着け!と胸をポカポカ叩く。

「何だよ冷たいな?綺麗所みんなかっさらって行ったくせにもうポイか?彼女ら泣くぜ?」

「みんな泣くような玉じゃないだろ?お前らがよろしくやってやりゃいいだろが」

不貞腐れたようにぶつぶつ言うラミンに二人は面白半分でからかった。
いつもなら自信満々で俺モテるからだの、余裕の顔で羨ましいだろだの言ってるのに、あまりに否定してくるラミンを不思議に思ったデスタはちらりと後ろを見やる。

「いつものラミンらしくないな?他に女ができたか?」

まさか国王の使いの方と良い仲に?
ミレイアが何者か知らされてないデスタとブライアンは疑いの目をラミンに向け脇腹に肘鉄を食らわせる。

「ごふっ!ち、違っ!んなわけないだろ!?」

いってぇっと脇腹を押さえていると急にビシッと整列するデスタとブライアン。
挨拶の為国王がやって来た。

「使者殿どうか試練を乗り越えこの世界を正常に…。いや、あなたに重荷を背負わせてしまったこと申し訳ないと思っている」

申し訳ないと目を伏せる国王に何も言わず横に首を振ったミレイアはピンと背筋を伸ばした。

「私に課せられた試練を乗り越えることで世界が救われるのなら私は喜んでその試練を受けましょう。それは私自身の為でもあります」

凛とした眼差しは決意に満ちていて美しく、シエラ王国は眩しそうに目を細めた。

「そう思ってくれているとは頼もしい。明日は私も迷いの森へ赴き全てを見届ける」

「はい、心強いです。お待ちしております」

「ああ、待っていておくれ。…ラミン殿」

「…はい」

ミレイアの一歩後ろに立っていたラミンは国王に目を向けられスッと気を引き締めた。
近寄り周りに聞こえない小さな声で話しかける。

「ミレイア王女を頼みましたぞ。きっと、ミレイア王女を守れるのはそなたしかおらぬ」

「承知しております」

ぐっと目に力を込め頷くと満足げに国王は頷いた。

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