魔法の鍵と隻眼の姫

真実を知るとき

城を出て3時間ほど。
アレキサンド村の鬱蒼と茂る森の中に目指す教会、アンロ・カリミン寺院はあった。
王国の端にある小さな村にありながら大きな煉瓦造りの寺院は入り口の上に丸いステンドグラスが印象的であちこちに絡まる蔦が長い年月を思わせた。
裏手の森に続く先には迷いの森がある山がそびえ立っている。

「歴史を感じる寺院だな」

馬車から降りたラミンの一言に反応したのはブライアン。

「ここは約1200年前から建ってる由緒ある寺院だ。国王様も年に数回訪れ祈りを捧げるんだ」

「へぇ…」

ミレイアが馬車から降りるのを手を貸しながら聞いていたラミンは見上げるミレイアに釣られてもう一度寺院を見た。

「お前、やっぱり何かあるだろ?」

「あ?何が?」

訝しげに見てくるブライアンに首を傾けながら振り返るラミンは何を言われてるのか本当に分からない。

「その手」

ブライアンがつんつんと指差す先にはミレイアの手を持ったままのラミンの手。
何を言われたのかやっと分かったラミンはパッと離した。

「これは!馬車を降りるのに手を貸しただけだろが」

「にしては長かったぞ~」

ラミンの肩に肘を乗せウリウリとラミンに詰め寄るブライアンはニヤリと笑う。
嫌そうな顔でその腕を払うラミン。

「使者殿はラミンに言い寄られて困ってませんか?こいつ手が早いから気をつけて下さい」

「え?」

ミレイアの横に立ち真面目な顔して言うデスタにきょとんとするミレイア。

「まさかもうおてつっ…もがもがっ!」

余計なことを口走ろうとするデスタの口を慌ててラミンが覆う。

「デスタ!余計なこというんじゃねえっ」

口を覆うと同時に首も絞めたものだからデスタは失神寸前、ギブ!ギブ!と腕を叩くがラミンは容赦なく力を込める。

「お前これ以上何か言ったら絞め殺すぞ!」

「ラミン!もう絞め殺してるって!」

ブライアンが苦笑いで間に入ってやっと手を離しデスタがよろけるのを支えてやる。

「ひでーな!今本気でやったろ?」

首を押えながら睨むデスタに悪びれずに腰の手を当て仁王立ちで睨み返すラミン。

「お前は何かと余計なこと言い過ぎなんだよ!次余計なこと言ったらわかってるよな?」

ずいっと顔を近づけ凄むラミンにさすがに怒らせ過ぎたとデスタはわかったよ…と小さく頷く。
ちぇっと舌打ちしたのを聞き逃さなかったラミンは冷たい眼差しを向けデスタを凍えさせた。

「あいっ変わらずこえーなラミンは」

「ブライアン!お前もだかんな!」

呟くブライアンにビシッと人差し指を指し釘をさすラミン。
肩を竦めへいへいとつまんなそうに言った。

その後もデスタとブライアンはラミンに詰め寄り結局どうなんだよ?なんて言うのをうっさい!関係ねーだろ!なんてプンプン怒るラミンが面白くてぽかんと見ていたミレイアはぷっと吹き出してしまった。
喧嘩し出したかと思ったのに結局仲が良いんだこの3人。

男3人もくすくす笑うミレイアに釣られ笑い出す。
ラミンはミレイアのお蔭で追求が止まって一安心で苦笑いを零す。

そこにキーっと扉が開く音がして一人の男性が寺院から出てきた。

「ノアローズのお使者の方ですね?ようこそおいで下さいました」



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