魔法の鍵と隻眼の姫

迷いの森

森の中は獣道しかなく魔物がいつ飛び出してくるかわからない危険な中、4人は歩きで迷いの森へと向かう。

護身術をわきまえてる男3人がミレイアの周りを囲みながら注意深く進んでいった。

「きゃっ」

木の根に足を取られたミレイアが転びそうになって前にいた国王が咄嗟に手を出し難を逃れた。

「大丈夫か?」

「は、はい。すいません」

「女性には歩きにくかろう。私の腕を取りなさい」

国王が支えたミレイアをしっかり立たせると腕を出して促した。
はい、とミレイアが腕に手を伸ばすとその手を熱い手が遮った。

「こいつの護衛は俺なんで、俺が支えます」

「…おやおや、これは失礼」

後ろにいたラミンがミレイアの手を取り国王に正面切って言うと国王は笑いを堪えるように引き下がった。

「ほら、行くぞ」

「あ、うん‥」

唖然としてたミレイアの手を引っ張り、くつくつ笑う国王とキースを無視して先へと歩き出した。

「国王様にも妬きもちとはなかなか見上げた心根ですな」

「いやいや、いいのだよ。それだけラミン殿はミレイア王女を想っているということだ」

笑いを噛み殺して交わす二人の言葉にミレイアは顔を赤くして縮こまる。

「別に、こいつはいつも危なっかしいんで目が離せないだけですよ」

平然と言うラミンにムッとしたミレイアはバシッとラミンの腕を叩いた。
いってえなぁ!と文句を言うラミンにミレイアもなんでそんなこというの!と負けじと文句を言っている。
言い合いながらも手を離さない二人を前に国王とキースは目を合わせしょうがないなと笑い合った。

暫くして周りに霧が立ち込めてきたことに気付いた一行は立ち止まるとノニが待ってましたとばかりに飛び出してきた。

「ここから迷いの森に入ります」

キースが言う先には10m先が見えないほどの真っ白い霧が立ちこめ何人も入れない雰囲気を醸し出している。
ノニはその霧に向かって突っ込むように飛んでいってしまった。

「あ、ノニ!」

ミレイアが慌てて呼ぶが霧に消えてしまった。

「何処に行ったのかしら」

「まあ、案内してくれる筈だから少し待ってよう」

ラミンがそう言うとミレイアはそうねと言い、他の二人も頷いた。

しかし5分、10分と経っても戻って来ないノニに少し苛立ちを見せるキース。

「まだですか?まさか置いてきぼりなんてことは…?」

「そんな事ありません。必ずノニは帰って来ます。もう少し待ちましょう」

キースに直ぐ様反論したミレイアはラミンの手をきゅっと握る。
ノニは必ず戻って来るはず。私は信じてる。
その思いに答えるようにミレイアを見ていたラミンも握る手に力を込めた。

30分ほどが経ちさすがにもう…とキースが痺れを切らした頃、霧の中からノニが飛び出してきた。

「ノニ!」

ミレイアが嬉しそうに呼ぶとみんなの周りをくるくる回ったノニがミレイアの前に止まった。
苛立ちが募っていたキースも悠然と待っていた国王も一様にホッとする。
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