魔法の鍵と隻眼の姫
『よかった…』
『よかった…なにが…?』
『よかったことなんてなにもない…』
「何だこいつ?」
ラミンが怪訝な顔で人型の霧を見るとまだ数体あった人型が一つに集約していった。
『なんだこいつ…』
『こいつ…いらない…』
『こいつがしねば…』
『自分も救われる…』
「なっ…」
「ひっ…」
不気味な声が変わり、絶句したラミンとミレイアの前に現れたのは黒い霧が集約して出来たミレイアの姿。
真っ黒な髪、真っ黒なドレス、白い肌がやけに眩しく、両目が赤黒く光り、極悪な表情でにやりと笑う。
『私は今まで人間に蔑まれてきた。人間なんてみんな死ねばいい…こんな世界無くなってしまえばいい…』
「や、やめて!」
自分の顔で、声で、思ってもみなかった言葉を紡がれミレイアは耳を塞ぎラミンの胸に顔を埋める。
頭を抱えるように抱きしめたラミンはキッと霧でできたミレイアを睨んだ。
「こいつを惑わそうってのか?その魂胆は見え見えなんだよ!」
『お前が私を惑わしている…お前が死ねば私は救われる…私のために死ね…』
霧のミレイアが手を伸ばしカッと目がより光ると、手から出てきた黒い霧がラミンを取り巻き苦しめた。
「うあっ、く…」
「いや!ラミン!」
首を押え倒れ込むラミンに縋りつきミレイアは力を使い纏わりつく黒い霧を何とか追い払った。
『私…なぜ私の邪魔をする…』
ラミンを庇い霧の自分に対峙したミレイア。
「ラミンを殺したって私は救われない!殺すなら私にして!」
「お前、何言ってんだ!」
荒い息を吐き起き上がったラミンは目の前で背を向けるミレイアの肩を掴んだ。
『私…私を殺す…?』
「そう、私を殺して!負の感情を昇華して全てを終わらせて!」
「すべてを…おわらす…」
コキコキとゼンマイロボットのように首を傾けた霧のミレイア。
肩を引っ張り自分に向かせたラミンが本物のミレイアを怒鳴った。
「馬鹿なこと言うな!お前が死んだって世界は救われない!そんなことしたって無意味だ!」
「でも…じゃあどうすれば世界が救われるというの?この黒い雲を溜め込んでるのは私なのよ!私が死ねば負の感情の器も無くなる!」
「お前のせいじゃないって言ってるだろう!お前が死んだら国王たちがどう思うかお前は知ってるはずだ!そんなに家族を悲しませたいのか!?」
食って掛かるミレイアにラミンは尚も怒鳴り肩を掴んだ手に力がこもる。
その痛みでミレイアの顔が歪んだ。
霧のミレイアは左右にコキコキと首を傾けながら静観していた。
「私はいいの…お父様たちは私がここで死ぬことを覚悟している。だからその分、今まで私を愛し慈しんでくれたの」
真っ直ぐラミンの目を見て訴えるミレイア。
国王たち家族のミレイアに対する過剰すぎる溺愛は16まで生きていられないと覚悟した上での愛情だった。
だから最後まで付いて行くと言った兄たち。
旅に出発する日が今生の別れとは思いたくなかったからだ。
『よかった…なにが…?』
『よかったことなんてなにもない…』
「何だこいつ?」
ラミンが怪訝な顔で人型の霧を見るとまだ数体あった人型が一つに集約していった。
『なんだこいつ…』
『こいつ…いらない…』
『こいつがしねば…』
『自分も救われる…』
「なっ…」
「ひっ…」
不気味な声が変わり、絶句したラミンとミレイアの前に現れたのは黒い霧が集約して出来たミレイアの姿。
真っ黒な髪、真っ黒なドレス、白い肌がやけに眩しく、両目が赤黒く光り、極悪な表情でにやりと笑う。
『私は今まで人間に蔑まれてきた。人間なんてみんな死ねばいい…こんな世界無くなってしまえばいい…』
「や、やめて!」
自分の顔で、声で、思ってもみなかった言葉を紡がれミレイアは耳を塞ぎラミンの胸に顔を埋める。
頭を抱えるように抱きしめたラミンはキッと霧でできたミレイアを睨んだ。
「こいつを惑わそうってのか?その魂胆は見え見えなんだよ!」
『お前が私を惑わしている…お前が死ねば私は救われる…私のために死ね…』
霧のミレイアが手を伸ばしカッと目がより光ると、手から出てきた黒い霧がラミンを取り巻き苦しめた。
「うあっ、く…」
「いや!ラミン!」
首を押え倒れ込むラミンに縋りつきミレイアは力を使い纏わりつく黒い霧を何とか追い払った。
『私…なぜ私の邪魔をする…』
ラミンを庇い霧の自分に対峙したミレイア。
「ラミンを殺したって私は救われない!殺すなら私にして!」
「お前、何言ってんだ!」
荒い息を吐き起き上がったラミンは目の前で背を向けるミレイアの肩を掴んだ。
『私…私を殺す…?』
「そう、私を殺して!負の感情を昇華して全てを終わらせて!」
「すべてを…おわらす…」
コキコキとゼンマイロボットのように首を傾けた霧のミレイア。
肩を引っ張り自分に向かせたラミンが本物のミレイアを怒鳴った。
「馬鹿なこと言うな!お前が死んだって世界は救われない!そんなことしたって無意味だ!」
「でも…じゃあどうすれば世界が救われるというの?この黒い雲を溜め込んでるのは私なのよ!私が死ねば負の感情の器も無くなる!」
「お前のせいじゃないって言ってるだろう!お前が死んだら国王たちがどう思うかお前は知ってるはずだ!そんなに家族を悲しませたいのか!?」
食って掛かるミレイアにラミンは尚も怒鳴り肩を掴んだ手に力がこもる。
その痛みでミレイアの顔が歪んだ。
霧のミレイアは左右にコキコキと首を傾けながら静観していた。
「私はいいの…お父様たちは私がここで死ぬことを覚悟している。だからその分、今まで私を愛し慈しんでくれたの」
真っ直ぐラミンの目を見て訴えるミレイア。
国王たち家族のミレイアに対する過剰すぎる溺愛は16まで生きていられないと覚悟した上での愛情だった。
だから最後まで付いて行くと言った兄たち。
旅に出発する日が今生の別れとは思いたくなかったからだ。