魔法の鍵と隻眼の姫
そっとその剣を手に取ったミレイア。
「ラミンの髪色にそっくりね」
負の感情は消えもう触っても黒い霧に支配されることはない。
浄化が成功しにっこりと笑うミレイアにもう迷いはなかった。
その剣はミレイアが持つことでより輝いているように見える。
ホッとしたラミンはオレンジの光が目に差し込み再び目を細める。
辺りを明るく照らす光。
かつてメリダヌス帝国の丘の上で二人で見た朝日を思い出す。
力が湧き、甘く疼くあの時の心。
「闇は開ける、新しい暁だ」
希望に満ちた陽の光を浴びた二人は向き合い見つめ合う。
「もうすぐ龍が俺に向かって飛んでくる。全てが俺の中に入った瞬間にその剣で俺を刺せ。封印されればもう黒い雲の脅威に恐れる日々はない。お前の右目も…」
言葉を切りそっとミレイアの頬に触れ右目の目尻を親指でなぞった。
「綺麗なアメジストに戻るはずだ」
ミレイアはわずかに微笑むと剣を構えた。
ミレイアの後ろから龍が向かってくるのが見える。
目を下に向けると震える剣が自分に向けられている。
まだ、一瞬の恐れが打ち消せずに震えるミレイア。
剣を持つミレイアの手をぎゅっと握ると揺れる目と視線を合わせた。
「何も恐れることはない。全て上手く行く。信じろ」
「…わかったわ。あなたを信じる」
真っ直ぐ見つめてくるミレイアに頷くと手を離し、一歩二歩と後ろに後ずさった。
龍はもう目の前。
ラミンは目を瞑る。
本当は、嘘をついた。
龍を取り込み剣を刺されれば自分も死にそれで永遠に黒い雲は封印される。
生きて帰るとミレイアに言っておきながら自分は死ぬ。
自分を刺したことで死に追いやった事を悔やむだろうミレイアを残して死ぬのは忍び難いがミレイアが生きているのならそれでいい。
モリスデンがきっとミレイアから自分の記憶を消してくれるだろう。
自分より大切な女…。
短い間に膨らんだ想いは人生の中でかけがえのないものになった。
こいつが生きてさえいてくれれば俺は死に逝くとしても本望だ…。
ドオオオッと大きかった龍は吸い込まれるようにラミンの胸に取り込まれていく。
その光景を目の前にしてミレイアは瞬きもできずに見入っていた。
ラミンは目を瞑ったまま穏やかな表情をしている。
苦しんでないと安心して、意を決して剣を構え直したミレイアはラミンの胸に焦点を合わせ、目に涙が溜まりそれを拭いつつ、荒くなる自分の呼吸を落ち着けるために大きく深呼吸してその時を待った。
そして最後の尻尾が取り込まれ黒く光る胸に思いきって短い剣を突き立てた。
「…やぁっ!」
スローモーションのように長い時間にも思えたがそれは一瞬の事で刺さった剣は胸に沈んで行く。
「ラミンの髪色にそっくりね」
負の感情は消えもう触っても黒い霧に支配されることはない。
浄化が成功しにっこりと笑うミレイアにもう迷いはなかった。
その剣はミレイアが持つことでより輝いているように見える。
ホッとしたラミンはオレンジの光が目に差し込み再び目を細める。
辺りを明るく照らす光。
かつてメリダヌス帝国の丘の上で二人で見た朝日を思い出す。
力が湧き、甘く疼くあの時の心。
「闇は開ける、新しい暁だ」
希望に満ちた陽の光を浴びた二人は向き合い見つめ合う。
「もうすぐ龍が俺に向かって飛んでくる。全てが俺の中に入った瞬間にその剣で俺を刺せ。封印されればもう黒い雲の脅威に恐れる日々はない。お前の右目も…」
言葉を切りそっとミレイアの頬に触れ右目の目尻を親指でなぞった。
「綺麗なアメジストに戻るはずだ」
ミレイアはわずかに微笑むと剣を構えた。
ミレイアの後ろから龍が向かってくるのが見える。
目を下に向けると震える剣が自分に向けられている。
まだ、一瞬の恐れが打ち消せずに震えるミレイア。
剣を持つミレイアの手をぎゅっと握ると揺れる目と視線を合わせた。
「何も恐れることはない。全て上手く行く。信じろ」
「…わかったわ。あなたを信じる」
真っ直ぐ見つめてくるミレイアに頷くと手を離し、一歩二歩と後ろに後ずさった。
龍はもう目の前。
ラミンは目を瞑る。
本当は、嘘をついた。
龍を取り込み剣を刺されれば自分も死にそれで永遠に黒い雲は封印される。
生きて帰るとミレイアに言っておきながら自分は死ぬ。
自分を刺したことで死に追いやった事を悔やむだろうミレイアを残して死ぬのは忍び難いがミレイアが生きているのならそれでいい。
モリスデンがきっとミレイアから自分の記憶を消してくれるだろう。
自分より大切な女…。
短い間に膨らんだ想いは人生の中でかけがえのないものになった。
こいつが生きてさえいてくれれば俺は死に逝くとしても本望だ…。
ドオオオッと大きかった龍は吸い込まれるようにラミンの胸に取り込まれていく。
その光景を目の前にしてミレイアは瞬きもできずに見入っていた。
ラミンは目を瞑ったまま穏やかな表情をしている。
苦しんでないと安心して、意を決して剣を構え直したミレイアはラミンの胸に焦点を合わせ、目に涙が溜まりそれを拭いつつ、荒くなる自分の呼吸を落ち着けるために大きく深呼吸してその時を待った。
そして最後の尻尾が取り込まれ黒く光る胸に思いきって短い剣を突き立てた。
「…やぁっ!」
スローモーションのように長い時間にも思えたがそれは一瞬の事で刺さった剣は胸に沈んで行く。