魔法の鍵と隻眼の姫
日が陰り小川の横で野宿することにした。
薪をくべ火を起こす。

「ふふっふふふっ…」

「また思い出し笑いか?このドスケベ」

「何の事だ?ふふっミレイアと似てるのか僕は…」

横目で見やりため息を吐くラミンにとぼけた顔してニヤつくトニアスはミレイアと似てると言われて有頂天になっていた。
髪も目も違うミレイアとトニアス。
顔立ちもミレイアは父似、トニアスは母似で、髪も目も違うが父似の兄のセイラスの方がミレイアと似ていたから今まで似てるなんて言われたことが無かった。

「シスコン…お前結婚できなそうだな?」

「…」

意地悪く言うラミンにムッとするが自分でもそう思うので沈黙する。
結婚なんかしなくてもミレイアが居ればいいと今までは思っていた…。
そんなトニアスを見て同じものを感じていたラミンは窺うように聞いた。

「お前…本気か?」

「…なにが?」

「小娘の事…お前たち実の兄妹だろ?」

「…む、分かってるよそんなこと。…自分でもわからないんだ。この想いが何なのか…。ラミンは色々恋愛してきたんだろ?何が違うんだ?教えてくれよ」

「は?なんだよそれ…」

面食らうラミン。

ミレイアを想うと胸が温かくなり、そして苦しくなる。
それがやっぱり恋というものなのかトニアスは分かりかねていた。
実の妹に抱いてはいけない感情なのか…?

「ああ~、そうだな。単純にその女にどこまで興味があるかだな…」

意外と真剣に考えてたラミンがぽつりと呟く。

「え?興味って?」

首を傾げたトニアスがラミンに注目すると鼻を掻き目を泳がす。

「男ならわかるだろ。好きな女が出来たら触れたいし抱きたい。どんな声で鳴くか聞きたい…とか?」

「泣く?」

「あ、まあ、その女の全てが知りたくなるし自分だけのものにしたいと思うってことだ」

初心なトニアスはなんのことだか分からない。
要は身体だと言うのは言わないでおこう…。

「ふ~ん、良く分からないな…。触れたり抱きしめたりはよくしてるけど…母上とだってしてるし…幼い頃からミレイアの事は何でも知っているし…」

思い巡らすトニアスに、そういうことじゃないんだが…と苦笑いのラミン。
分かりやすくたとえ話を言ってみた。

「たとえばキスしたいとか?欲情したら重症だと思うが…」

「キッ、キス!!?」

眠るミレイアにキスをしたことを思い出したトニアスは慌て出しボッと噴火したように赤面した。

「あん?なんだ?思い当たることでもあるのか?」

訝しげに見てくるラミンに首がもげそうなほど横に振った。

あれは、好きだからと言う前に目覚めてほしい一心でした行為で他意はない。
欲情なんて以ての外だ。
キスした後の罪悪感と虚しさが思い起こされる。

「やっぱり僕は兄としてミレイアを好きなんだ…」

確信めいたことを言ってみたもののなんだかがっかりした。
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