魔法の鍵と隻眼の姫
意気消沈するトニアスに自分を重ねる。

ずっとブレーキをかけていたはずなのに…。
12も下の小娘だと思っていたのが一緒に旅をする短い間に育ってしまった想い。
心を通わし信頼関係を築くための旅が違う方向に行ってしまった信頼よりも勝った愛情。
ミレイアはどう思ってるか知らないが、だから逆に世界を救うことに成功したのかもしれないと今は思う。

旅に出る前からモリスデンは確信してただろう。
だから余計な感情を抱かさないために他の同行者を許さなかった。

ジジイは何もかも御見通しってか?ムカつくな…

「ラミンは…ミレイアの事どう思ってる?」

渋い顔をしているといつの間にか見ていたトニアスの言葉にギョッとした。

「どうって…」

困惑するラミンにずいっと迫るトニアス。

「ミレイアの事…好きだろ?キスしたいだろ?ミレイアにキスして目覚めさせてくれないか?」

「何、言ってんだお前?」

トニアスがそんな事を言うとは思わなくてちょっと驚き、真剣な顔のトニアスを凝視する。
前に向きなおしたトニアスは俯きながら言った。

「ミレイアが一番好きだった眠り姫のように運命の相手がキスしたら目覚める気がするんだ」

「…馬鹿らしい、そんなのただのお伽話だろ?」

鼻で笑ったが、そう言えばミレイアはヴァルミラの前でもそんなことを言っていたと思い出す。
そんな馬鹿なことできるかと一蹴したがミレイアは意外と本気で言っていたのかもしれない。
何故だかズキズキと胸が疼く。

「ラミンが、運命の相手なら…って思ったんだ」

「俺なんかに小娘を取られてもいいってのか?」

わざと意地悪く言ってみるとムッとしたトニアスは焚火の炎をじっと見つめた。

「誰にも、ミレイアは取られたくない…って思うけど、ラミンなら…って思っている。何故だか分からないけど」

「・・・・」

炎に照らされ真剣な表情の横顔に言葉を飲みこんだ。

「…馬鹿なこと言ってないでもう寝ろ。明日からまた魔物の居る森を抜けないといけないんだ、体力温存しとけ」

応えは出さずに誤魔化してラミンは寝たふりをした。

あふれ出る思いを認めたくない。
まだ、考える時間が必要だ。

意を決して訴えたがスルーされ寝てしまったラミンの背中を見てふぅとため息をついたトニアスは夜空を見上げる。

どうしたらミレイアは目覚める?
そればかりずっと考えていた。
無数の星が瞬いていて今も眠っているだろうミレイアの事を想った。
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