魔法の鍵と隻眼の姫
それから、森を行くと魔物に遭遇したが小物ばかりだったため全てトニアスに退治を任しラミンはノニの結界の中で高見の見物。

今、10匹のトカゲに角が生えたような魔物に取り囲まれていた。

「やれそこだ!違うっ!もっと腰を落とせって!ほらほら後ろ狙われてるぞ!」

と相変わらず嬉々としてヤジを飛ばす。

「くそっ!ラミンがやれよっ!」

ゼエゼエと息を上げ文句を言ってるトニアスを余所に腕を組み木に寄りかかるラミンは余裕の表情。

「何を言っている?お前の鍛練の為に訓練の場を提供してんだ。有り難く思え!」

「…むううう~っ!ラミンのっ!ばかやろ~っ!」

鬱憤を剣に込めて魔物に向かって振り落とす。
それを見てラミンは手を叩いて囃し立てる。

「おうおう!吠えろ吠えろ!上手く力が出て調子いいじゃんか!」

度重なる魔物との戦いでトニアスは格段に腕を上げているが当の本人は気付いていない。
本当はトニアスが危険に晒されたら何時でも助けに行くつもりのラミンはヤジを飛ばしながらトニアスの成長を感慨深く見守っていた。

「はあはあ…やっと…終わった…」

「ご苦労さん、一人でやれたじゃんか」

燃え上がる魔物を前にドサッとしりもちを着くように座りこんだトニアスの肩を叩きニヤリと笑うラミンをじっとりと睨み上げた。
緊張状態が抜けず不機嫌極まりないトニアス。

ラミンのフードからノニが飛び出してきてトニアスの周りを飛び回り彼の肩に乗った。
ペタペタと頬を触るノニはニコニコでまるでトニアスを誉めてるようだった。

「ノニも良くやったって誉めてるぞ」

「あ、ありがと、ノニ」

嬉しくてハニカミながらお礼を言うとノニはウンウンと頷きトニアスの周りをくるくると飛び回って金粉を撒き散らす。
それを目で追ってやっとホッと気が抜け、達成感がじわじわと込み上げた。

ニヤニヤと笑いを押さえきれないトニアスを横目で見つつ、ふっと笑ったラミンは容赦なくトニアスの背中をバシッと叩いた。

「いでっ!!」

「よし!ちんたらしてたら日が暮れる、さっさと行くぞ!」

踵を返し馬たちの方へと行ってしまったラミンを、嬉しさもじっくり味わえなくて膨れっ面のトニアスが着いていく。
ジンジンと背中が痛い。

「ちぇっ、今度魔物に喰われたらいいんだ」

「ん?何か言ったか?」

「いいえ!何も!」

振り返ったラミンにプンと顔を背け唇を突き出すように拗ねたトニアスが、またミレイアと似ていてラミンは一瞬驚き、ぷぷっと吹き出した。

「やっぱりお前ら兄妹だな…」

「何のことだ?」

「何でもねえ!ほら行くぞ!」

懐かしむように目を細めていたが誤魔化してウォルナーに跨がりさっさと行ってしまう。

「ちょっとーっ!待てよ!」

なかなかいいコンビである?
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