魔法の鍵と隻眼の姫
守りたい命
「なあ、ラミン。ここは他の地域に比べると復興が遅い気がするんだけど…」
「ああ、そうだな…復興より河川を作る方を優先してるのかもな…」
翌日、かつてハウライトとメリダヌスの国境付近だった場所まで行くと、泉を囲むように教会や建物が立ち並んでいたが崩れたまま人気もなくゴーストタウンのようになっていた。
「ここはバカでかい魔物が時折現れては何もかも破壊され人が殺されている。最近住み着いたようでどうも直ぐ近くにねぐらがあるらしい」
通りすがりの男に話を聞くとここは早く立ち去った方がいいと忠告をして足早に行ってしまった。
メリダヌス帝国の兵が町中まで来ないように警備しているそうだが人々はいつ魔物が現れ町を襲うかと戦々恐々としているという。
「これは、見逃せないな…」
「ラミン、まさか…」
顎に手をやりなにやら考えているラミンにトニアスは嫌な勘が働き顔が引き吊る。
目が合いニヤリと笑うラミンは史上最強に悪い顔をしていた。
……
「ラミン、正気か?未だかつて無いほど大きくて恐ろしい魔物だって言ってたじゃないか。それを誰の手も借りずに僕たちだけで退治するのか?」
「ああ、他の人間が居たら逆に足手まといだからな。魔物の脅威に晒されてるのに放ってはおけないだろ?」
メリダヌスの兵の協力を得ればまだ良いものを、話を聞いたその足でラミンは森へと入って行った。
不気味なほど静かな森は風の音も聞こえない。
魔物どころか動物の気配も感じず、まるで息を殺して気配を消しているようだ。
「動物さえいないな…」
「一旦戻ろう、このまま行くとこっちが迷子になるよ」
いつの間にか森の奥へと入り込んで鬱蒼と茂る木々で辺りも暗い。
トニアスの言葉に何の手掛かりも無しかとラミンも戻ろう後ろを振り返った時、悲鳴が聞こえた。
「ギャア~~ッ!!」
「はっ、なに!?」
「あっちだ!」
トニアスが驚いている間にラミンはもう悲鳴の聞こえた方に走っていった。
「ちょ!ラミン!また置いてきぼりかよ!」
あっという間に小さくなってくラミンに文句を言いながらトニアスも追いかけた。
ギャアッ!っとまた近くで悲鳴が聞こえる。
これは魔物の声だなと思いながら木の間を縫っていく。
そこにドスンドスンと地響きのような音が響き黒い影が見えてきた。
「なんだ、あれは…。」