魔法の鍵と隻眼の姫
ノニの金粉が先導して軽々と抱き上げ軽快に歩くラミンにぴたりと寄り添うミレイアは久しぶりに会う家族にドキドキしていた。
ずっとずっと大切にしてくれた家族。
あの決戦の日に死を覚悟していたはずも、眠り続けた状態で帰って来たミレイアに喜びながらも複雑な心境だっただろう。
毎日代わる代わる会いに来ては声をかけ目覚める日を願っていたのをミレイアは感じ取っていた。
溢れる愛情を注いでくれた家族に感謝してもし切れない。
晩餐会場の前に着くとドア前に立っていた執事が驚いた顔をし呟いた。
「王女さま…」
執事もミレイアを避けていた一人だ。
黒い雲が無くなった今、呪いが解けたように恐怖は無くなりミレイアの右目を見て息を飲み、気まずい思いが胸を占める。
そんな執事にミレイアはにこりと笑い、人差し指を口元に持っていきしーっと黙るように仕草をすると、意を汲んでくれた執事は僅かに微笑み黙って一礼してドアに手を掛け開けてくれた。
ガタッ!!
和やかに談笑してたらしい面々は入って来た人物を見て言葉を失い勢いよく立ち上がった。
国王、王妃、セイラス、トニアスは
信じられないように目を見開く。
「お父様、お母様、お兄様……」
ラミンに降ろしてもらい一人で立ったミレイアは胸の前で両手を握り溢れる涙が頬を伝った。
「ああ……!ミレイア!!」
ゆっくりと歩き出すミレイアに駆け寄り国王達も涙を流し抱き締め合った。
その光景を傍目で見ていたラミンの横にグレーのローブが見えた。
「やっとこの日が来たか。ぐずるお前をその気にさせるのは骨が折れたわい」
「何のことだ?」
方眉を上げ隣を睨むとモリスデンの目尻に光るものが見えた。
「ラミン……ようやった」
一瞬目を見開いたラミンはふんと鼻を鳴らし腕を組み、家族に抱き締められて泣きながら微笑むミレイアを見つめ想う。
これでやっと望むものが全て揃った。
青い空。
平和な世界。
ミレイアの笑顔…。
これからも守ることに力を注ごう。
いつまでもミレイアの笑顔が曇らぬように。
FIN