魔法の鍵と隻眼の姫
女将は祭りがあると言っていた。
村の中心街を行くと多くの人々がひしめき屋台が並ぶ。
年に一度、旅人の無事を祈るこの祭りは宿場が多くあるこの村特有のもので、かつてこの村で恋に落ちた旅人と村娘との恋物語が発端だそうだ。
家々の扉には旅人の無事を祈る花輪とハンカチが飾られ、通りの家と家の間にも色取り取りの花とハンカチが飾られてそれをランプが照らして華やかさを演出していた。

「すてき・・・」

フードを押え上を見るミレイアは花やハンカチで彩られた様子を見てぽつりと呟く。
口元を上げてミレイアを見たラミンはどこで食べようか探しながらミレイアに話しかけた。

「こんな人ごみを歩くのも経験済みか?」

「いいえ、あまり人の居るところには行かなかったわ。私は遠くから見るだけ。こんな楽しそうなお祭りも初めてよ」

嬉しそうに口元を綻ばせフードをかぶり直したミレイア。
と、そこへガタイの大きな男と肩がぶつかった。

「イタッごめんなさい」

咄嗟に謝ったミレイアに男は「ふん、気を付けろ」と一言言って去って行った。
ぼーっとその男を見送っていたらサッと手を繋がれ引っ張られた。

「ぼけっとしてるとまたぶつかるぞ。はぐれてしまったら大変だ(俺が)ほら、さっさと行くぞ」

「あ、うん…」

繋がれた手が思いのほか熱くて手を見つめた。
何時も父や兄たちに手を繋いでもらった。
そのどの手にも似ていない男の大きくて厚い手には剣だこが出来ていてごつごつしていた。
包まれた自分の手が温められ熱を持つ。

お兄様たちのしなやかな手とまるで違う…。

「・・・」

何とも言えない感情が沸き上がってくる。
これはなんなのか・・・ミレイアはわからず首をひねった。


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