魔法の鍵と隻眼の姫
翌朝、目を覚ましぼやける目線を巡らしたミレイアは傍らで、組んだ腕の上に頭を乗せて寝ているラミンを見つけそっと手を伸ばす。
白銀の長めの髪をそっと触ると意外と柔らかく毛並みがいい。

ラミン、一晩中私を看病してくれてたの…?

浅黒い肌、長いまつげに鼻筋の通った顔立ち。
寝ていても綺麗な顔とわかるその姿をしばらく見つめほっこりした気持ちになった。

汗でべたべた・・・お風呂に入ろう。

気が付くと昨日の格好のまま、着替えもせずに寝てしまって服もよれよれ。
起き上がったミレイアはラミンに毛布を掛けてやり隣のバスルームに入った。
お城のお風呂よりは小さいけど綺麗に整えられてる内装に気を良くしたミレイアは服を脱ぐ前に妖精のノニを呼んだ。

「ノニ居る?」

何処からともなく出てきたノニはミレイアの周りを飛び回るとミレイアの顔の前に留まった。

「私がお風呂に入ってる間結界を張って欲しいの。出来る?」

聞かれてうんうんと頷いたノニは上へ飛ぶとバスルーム全体を飛び回り金粉を飛ばした。
そうすると何か強固な壁が出来たように周りの喧騒の音が消えシーンと静まり返った。

「ありがとう。すごいわ!強固な結界!これでゆっくりお風呂に入れるわ。ノニも入る?」

そう言うとノニは恥ずかしそうに顔を赤らめて首を振った。

「そお?じゃあ見張りをお願い」

恥ずかしそうにしているノニが可愛くてにっこり笑ったミレイア。
うんうんとまた頷いて自分の周りを飛んで消えたノニを見届けてからお風呂に入った。
鏡の前で眼帯を外したミレイアは前髪をかき上げ自分の右目を覗き込む。
ラミンには絶対に触るなと言ったが暫しの間眼帯を外しても壊れない限りは問題は無い。
生まれた時より赤かった右目は年を追うごとに赤黒く怪しく光るようになっていた。

また、黒くなってる…。
ふうっと大きなため息をついてミレイアはゆっくりお風呂に浸かった。

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