魔法の鍵と隻眼の姫
温かい温もりの中目を覚ますと、自分はベッドに突っ伏して寝ていることに気づき、肩に毛布が掛けられていることに不思議に思ったラミンはハッとして目の前のベッドを見た。

ベッドの上はもちろんミレイアが…、目をやるとそこはもぬけの殻。
がたっと椅子の音が鳴るのを気にすることもなく立ち上がったラミンは辺りを見回しミレイアが何処にもいないことに気付く。

トイレ!…いない。
クローゼット…入ってるわけないか…。
バスルーム…鍵が開かない。

探し周りここかとちょっとほっとしてコンコンとノックしてみる。
耳を澄ましてみるけど何の音もしない。
あまりの静けさに、まさか、中で倒れてるんじゃ…と、焦ったラミンはどんどんと勢いよくドアを叩いた。

「おい!大丈夫か!?お、いやいや、み、違う!ひ!でもない…」

王女、こんなとこで言えない。
ミレイア、名前で呼ぶなんてもってのほかだ。
姫、も同じ。

「み、ミミ、ミミミ!ミミ!」

またミミと連呼するラミンは昨日の不機嫌そうな王女の顔を思い出す。

あ~~~なんて呼べばいいんだ!?

「小娘!大丈夫かっ!?返事しろっ」

行き着いた先は小娘。
余計にミレイアに睨まれそうだがそんなこと言ってる場合じゃない。
どんどんとさらにドアを叩くと、カチャッとドアが開いた。

「何してるの?ラミン」

さっぱりした顔でキョトンとしているミレイアを見てラミンは固まり、そして脱力した。

「はぁ、焦った。驚かせんなよ。ノックしてんだから返事くらいしろ」

「え?なにが?何も聞こえなかったわ」

「はあ?あんだけドア叩いてても聞こえないってどんだけ耳遠いんだよ!」

恨みがましそうに睨むラミンの目の前をノニが飛び回って気が削がれた。

「ああ、ノニに結界を張ってもらったから聞こえなかったんだわ」

飛び回ってたノニに手を伸ばし掌に乗せたミレイアはノニとねぇ~なんて笑いあってる。

「結界?そんなもん出来るのか?」

驚くラミンに得意そうに振り返ったノニはうんうんと頷く。

「そう、結界張らないと危ないし…それに誰かに覗かれても困るじゃない?」

「…だれが覗くって?」

ニヤリと笑いラミンを見るミレイア。

覗くって、同じ部屋にいる俺しかいないじゃないか。

暗に自分に覗かれると言ってるミレイアに腹立たしい思いが少しあったが目を細め睨んだラミンは手を伸ばした。
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