魔法の鍵と隻眼の姫
身体が震えその場から動けないミレイアは冷めた目を炎に向けるラミンから目を離せずにいた。
風になびく白銀の髪が炎を受け青白く光る。
なんて恐ろしく、美しい…、それはまるで、鬼。
鬼は伝説上の生き物だが物凄く強くその姿は美しく人を惑わすという。

魔物は燃え尽きると黒い灰になり風に煽られ消えていく。
最後の炎が燃え尽きようとしてた時、力尽きたミレイアはその場に倒れそうになった。

「あっおいっ!」

ふらつくミレイアに気付き駆け寄るラミンによって地面に倒れ込むのを免れたミレイア。

「だ、大丈夫。ホッとしただけ…」

「無理すんなって」

朦朧としたミレイアを抱きかかえると焚火の所に連れて行き木の根元に座らせた。

「ノニ、居るか?」

一息ついたラミンの呼びかけにふわっと出てきたノニはラミンの頬の傷に気付き心配そうにぺたぺたと触る。

「いてぇ、ノニやめろ。お前、結界張れたな?魔物に見つからないようにここも結界張れるか?」

うんうんと元気に頷いたノニは辺りを飛び回り金粉をまき散らす。
すると見えないながらも強固な結界に守られたことを感じたラミンはホッとする。

「お前凄いな!もっと早くにこうしとけばよかった。恩に着る。馬たちも襲われずに済みそうだ。」

ちょっと離れた馬にも結界が張られ馬たちは何事もなかったようにブルルと鼻を鳴らしている。
戻ってきたノニの頭を指先でぐりぐりと撫でてやると嬉しそうに笑って飛び回った。
ノニを目で追っているとこちらを凝視するミレイアと目が合った。

「おい、大丈夫か?怪我はないか?」

ラミンの目を離さず目の前に来て心配そうに近づく顔に手を伸ばした。
傷にそっと触れると「いてっ」と痛そうな顔をするラミン。

「いつもの、ラミン…」

さっきの鬼の形相はどこへ行ったのか?
今のラミンはいつものラミンだ。

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