魔法の鍵と隻眼の姫
時は2千年前。

この土地はまだ混沌とした世界。
魔物がはびこり人間は恐怖に苛まれながら肩身を寄せ合い生きていた。
そこに立ち上がったのは今の国王の先祖と魔法で人々を守っていた魔女だった。

傷つき憔悴しながらもなんとか魔物撃退に成功した先祖は人々から救世主と崇められ初代王となり王国を築き上げた。
魔女も賢者と崇められ人々は敬った。

しかし、王と魔女は愛し合い結婚すると言った時、民衆からの大反対を受けやむなく王は結婚を諦め、魔女は王国を去ることとなる。

王は80そこらで寿命が終わる人間。しかし、魔女は魔物と同じ寿命の長い生き物。
美しい姿は変わらないが既に100歳を超えていた。
人間と魔物同然の魔女を結婚させ王族にするのを側近たちは元より民衆が許さなかった。

賢者と敬っていたはずの魔女を剣呑な目で見るようになった民衆。
結局は魔女も魔物、いつかまた魔物のように人々を苦しませるに違いない…。
起こりもしないことを怖がり白い目で見る民衆に魔女は悲しみ、愛するものを奪われ、そして、

人々を恨んだ。

民意に沿い結婚を諦めた王にも失望した魔女は王国を立ち去る時、王に呪いをかけた。

~王よ、私はお前に呪いを掛けよう。
 人々が良き心を忘れ、悪意が満ちた時、
 王の血を引く者の中に異色の目を持つものが現れる。
 その時、空に悪しき魂渦巻き世界を滅ぼすだろう~

恐怖に慄く王は跪き魔女に許しを請うが魔女は聞き入れなかった。
しかし、王を背にし去り際にこうも言った。

~もし、この世界を救いたいのなら、鍵を見つけるがよい。
 悪しき魂を滅するために必要な救世主となる鍵を…~

それから何百年と世界は平和に、王族にも異色の目を持つ者は現れなかった。
魔女の言葉は言い伝えとなり王家に代々語り継がれてきたが人々は魔女の存在も忘れてしまっていた。
伝承だけが残りおとぎ話のように語り継がれている。

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