魔法の鍵と隻眼の姫
「わしはその魔女のたった一人の弟子。いつか、必ずこの日が来ると師匠は言っておった」

「そんな…それが、今だと言うのか?そんな何千年も前の事を、この小さな姫が背負わなければならないのか?」

2000年も生きていたモリスデンにも驚きだが、言い伝えは本当の事だった。
愕然とする王に気が付いたセイラスは心配そうに父の顔を見つめる。

「その魔女は今どうしている?この呪いを解くことはできないのか?」

必死の形相の王にモリスデンはゆっくりと首を振る。

「師匠は手の届かないところにいる。もう、目覚めることはない。そして、呪いは解くことは出来ぬ。この姫が自ら悪しき魂に立ち向かい勝たねばならぬ」

「おお、なんてこと…」

王妃は顔を覆い涙にくれる。
愛しい我が子がこれからどんな過酷な運命を辿らねばならないのか。
小さな姫が可愛そうで代わってあげられるものなら代わってやりたい…。

「母様?なぜ泣いているの?父様?」

心配そうに両親を見るセイラスを王は抱き寄せる。

「ああ、心配はいらないよ。母様は姫を生んで疲れているのだ。大丈夫。姫もお前たちも父が守るよ」

「僕も、姫もトニアスも母様も父様もみ~んな守るよ!」

元気に言うセイラスに王は微笑んだ。

「ああ、頼んだぞ、セイラス。お前は頼もしい兄だな」

嬉しそうにはにかむセイラスを抱き上げトニアスを見ると、いつの間にか姫の横で寝息を立てていた。

「どんな運命が待っていようと姫は必ず守る。モリスデン、世界を救うには鍵を探せと言っていたな?その鍵はどこに?それが姫を救うことにもなろう」

「うむ、その通りだ。鍵は今はわからん。しかし姫が生まれたことで鍵も永い眠りから目覚めておろう。わしが探しておく。」

頷くモリスデンは姫を見つめ予言のように重々しい声を出した。

「今すぐどうこうなることはない。姫が16になるまでに鍵を捜し、悪を滅する。その間徐々に世界は混沌とし元凶となる姫を亡き者としようとする者が現れる。姫を守り、その時を待て」

強い意志で王は頷いた。
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