魔法の鍵と隻眼の姫
ギターが旋律を鳴らし、カン!と靴音が響くと下を向いていたアマンダが顔を上げる。

真剣な表情。手が優雅に泳ぎくるりと回るとたんっと飛び上りスカートがふわりと広がった。
ゆっくりだった動きはギターの速弾きに合わせて激しくなる。
指先からつま先まで神経を研ぎ澄まさせたようなその踊りに店内の客全員が釘付けになった。

ミレイアは兄達と社交ダンスの練習ぐらいしかやったことがないし見た事がない。
世間知らずな王女にはアマンダの踊りはセンセーショナルで見たくないと思っていても引き込まれてしまうその踊りに目が離せない。

こんなに優雅踊る人を初めて見た。

汗がキラリと飛び恍惚とした表情で、時に妖艶に時に無邪気に笑うアマンダは神かかってると言われるのもよく分かる。

ラミンはちらりとアマンダの踊りに魅了されているミレイアの顔を見た。
呆然としているようなその顔はフードが後ろに落ちかけていてラミンからもよく見える。
踊りに釘付けのミレイアにふっと笑って目線をアマンダに戻した。

何気にラミンを見たミレイアは優しく笑みをこぼす横顔を見てドキッと胸が鳴る。
優しげに見つめる先にはアマンダがいてアマンダもラミンを見て妖艶に笑う。

キリキリと心臓ではない何処かが痛み出す。

ギターが止み、伏せた状態で踊りを終わらせたアマンダが立ち上がるとシーンと静まり返った店内に歓声と拍手が響き渡った。

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