魔法の鍵と隻眼の姫
ちらりと目線をミレイアに向けると、近くのテーブルに座り男たちに囲まれていた。
にっこりと笑い隣のシャルーと何か話しているのを見て、何かぎりぎりと胸の中で音がする気がして眉間に皺を寄せるラミン。

厄介払いができたアマンダはほくそ笑み、それからミレイアから話を逸らすようにラミンに何かと話しかけた。
何を言っても生返事のラミンにムッとしながらも気を取り直して質問した。

「そういえば鍵がどうのとか言ってたけど何の事?無くしたの?」

「ん?ああ、まほ…、古い鍵を探してんだ。アマンダ、世界中渡り歩いてんだ、何か聞いたことないか?言い伝えでもいい」

「鍵についての言い伝え?う~ん、聞いたことあるような無いような…」

さっきまで上の空だったラミンが話に食い付いてきてアマンダは勿体振るようにちらりとラミンを見ながら考えてる振りをした。

ミレイアの事も気になるが鍵の在処を突き止めないとこの旅は進まない。
アマンダが知らないならまた聞いて歩いた方がいいなとラミンが思っていると、ミレイア達の方からワッと笑い声が沸いた。
思わずそちらに目を向けるとさっきよりも男達が群がってその中心でミレイアが笑っている。
その隣ではシャルーが赤い顔をして縮こまっていた。

あんなに、楽しそうに…。

ついついミレイアの横顔を見つめていると冷たい手が頬を包む。

「こっち向いて!思い出したわ。ちょうど私が明日から向かうバットリアっていう町にそんな話を聞いたことがあるの。次いでだし私も一緒に行くわ。一人旅も危険だし、ラミン、私も守ってくれるでしょ?」

「一緒に?いや、それは……」

頑なにモリスデンに他の者は付いて行ってはならぬと言われていたがいいのだろうか?

「ねえ、ダメ?」

頬を包んだまま上目遣いでお願いされてうーんと唸る。
まあ、行き先が一緒ってだけだし、目的地に着いたら別れればいいからいいかと楽観主義のラミンは安易に返事をした。

「ああ、わかった。その代わり案内しろよ?」

「もちろんよ!もう暫く一緒にいられるわね?ラミン」

そのまま抱き着きアマンダはにやりと笑んだ。
バットリアまではここから一週間はかかる。
ただラミンと一緒に居たいが為、本当は鍵の言い伝えなんか知らないアマンダはそれが重要なこととも知らずラミンに嘘をついた。

あとはあの娘が居なければもっといいんだけど…。
ちらりとミレイアの顔を見て忌々しく思う。
< 62 / 218 >

この作品をシェア

pagetop