魔法の鍵と隻眼の姫
「ラミン格好良かったわ!あんな大きな魔物を倒すだなんて!でも…」

アマンダはラミンに包帯を手渡すミレイアをキッと睨んだ。

「こんな危険な旅なら今すぐやめて。護衛なら他にもいるでしょ?あたしも世界中旅してるけどこんな危険なこと滅多に起きないわよ!」

きゅっと包帯を巻き終えたラミンは立てた膝に手を置きアマンダを見据えた。

「俺は元々傭兵だぞ?危険なのは百も承知だ。これは俺が成し遂げなきゃいけない仕事だから他のやつには勤まらない。それに本当なら今頃この先の村に着いてるはずがまだこんな荒野にいるのは誰のせいだと思ってる?」

「…う、それは…」

静かに諭すラミン。
休みたいと言ったのは自分、朝の支度を早くしなかったのも自分。
こんな目に合うんならちゃんとしとけばよかったと今さらながら思うアマンダは俯いた。

「まあ、俺ものんびりし過ぎた」

そう言うとアマンダを抱き上げたラミンはまだ座って見上げてくるミレイアに目を向けた。

「悪かったな小娘。また危険な目にあわせて。アマンダもわかってくれたはずだ。先を急ごうか」

目を見開き立ち上がったミレイア。
冷たいどころか謝ってきて気が抜けた。
するとラミンの肘から血が出てるのに気が付き、アマンダをウォルナーに乗せたラミンの腕を引っ張った。

「ん?」

振り返ったラミンの腕に手を添えるミレイア。

「ヘマはしないと言ったくせに…」

不機嫌そうに言うとくるっと翻しフィーダに駆け寄って行った。

ん?と何をしたかったのか分からなかったラミンはウォルナーに乗ろうと肘を曲げた時にはっと気付いて袖を捲り腕を見た。
さっき魔物に吹っ飛ばされた時に肘を打って少し血が出てたはずの所は跡形もない。

あいつ…。

ミレイアはフィーダに乗り首を撫でている。
また力を使わせてしまった。
ちっと舌打ちをしてウォルナーに股がった。

「小娘、これくらいじゃなんともないだろうな?」

「それくらい大したことないわ。先を急ぎましょう」

そう言うとミレイアは駆け出して行った。
ピューッっとその先をノニが金粉を撒きながら飛んでいく。
そのお陰で辺りは微かに明るく道が見える。

「ねえ、ラミン何のこと?」

「何でもねえ、しゃべってると舌噛むぞ」

ラミンもミレイアに離されないように駆け出した。
ン!と舌を噛みそうになったアマンダは黙るしかない。
二人だけにしか分からない会話をされて不満が募る。

また熱でも出すんじゃないかと心配したが颯爽と駆けていく様子のミレイアに安堵し追い付かんとウォルナーの腹を蹴って足を早めた。
もう辺りは真っ暗で月明かりもない。
本当は危険だが立ち往生してもまた魔物に見つかる。
せめて水と草があれば馬も休められるが何もない荒野。
村のある所まで行かないとやはりダメだなとラミンはミレイアに追い付くとちらりと目を合わせ先頭に立った。
ミレイアも何も言わずラミンに付いていく。

その様子をラミンの背中で見ていたアマンダは面白くない。
ぎゅっと腰に巻いてる手に力を込めミレイアを睨んだ。

憎悪が蓄積されていくのを感じる………。
< 80 / 218 >

この作品をシェア

pagetop