魔法の鍵と隻眼の姫
どれくらい走っただろうか。
僅かながらに畑や小川が見えてきて人里近くに着いたのだとわかる。
家がポツリポツリと点在しており灯りも見えた。
何処か野宿の出来るところがないか探すラミンにアマンダが不満を漏らす。

「あんな危険な目に合ったのに野宿なんて怖すぎるわ!宿はないの?」

「こんな小さな村にある分けないだろう?」

呆れため息を吐くラミン辺りを見回し1軒の家を目指した。
2階建の小さな一軒家。
庭には花壇があり僅かだが花も咲いており綺麗に整備されている。馬から降りるとフードを取りドアをノックした。

「こんな夜更けに誰だね?」

ドアの向こうから女性の声が聞こえる。

「夜分にすいません。旅の者ですが今夜の泊まる場所を探してます」

ドアを少し開けた家人と何やら話しているラミン。
気になったミレイアはフィーダから降り近づいて行く。

「おや、妖精?珍しいの?」

ラミンの後ろから来たミレイアとその周りを飛ぶノニに気付いた家人のおばあさんがドアを広げた。

「喜べ、この人が今日ここに泊めてくれるそうだ」

振り返ったラミンがにっと笑う。
馬上のアマンダが手を叩いて喜んだ。

おばあさんのトレニーと孫のライオネルの二人暮らしをしているという家に入ると居間には夜更けなのにまだ5歳くらいのライオネルが起きて泣きべそをかいていた。

「あの子の母親がこの間亡くなってね。形見のペンダントを無くしてしまって諦めきれなくてべそをかいてんだよ。なかなか寝てくれなくて困ってたところだ」

お茶を出してくれるトレニーがため息をついて暖炉の前で膝を抱えるライオネルを見つめる。
ライオネルの隣にそっと座ったミレイアが優しく話しかけ背中を摩る。
みるみる笑顔になるライオネル。

「お姉ちゃん!約束だよ!」

立ち上がるとそう言い、お休み!と元気よく二階に駆け上がった。
目を丸くするトレニーとラミン。
アマンダはノニにトランクを出してもらって荷物を漁っていて見ていない。

「お前、何を話してたんだ?」

「明日、泊めてくれたお礼に失くしたペンダントを探してあげると約束しました」

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