魔法の鍵と隻眼の姫
にっこり笑うミレイアが少し青い顔をしていることに気が付いたラミン。

「おい、おま…」

「それはありがとう。あの子の母親は魔物に襲われてねぇ、酷い世の中になってしまったよ。国中が荒れて作物は取れないし、お偉いさんは戦争ばっかりでこんな小さな村に見向きもしないし。外へ出れば魔物に襲われる。これもみんなあの大きな国に生まれた王女様のせいだっいうんだからねぇ。その王女さまってのはお城でのうのうと生活してると聞けばみんな我慢ならないのもわかるよ」

「……」

「ほんとよねぇ、自分のせいで世界は酷いことになってるのになんで生きてるのかしら?さっさと死んでくれたら世界も元通りになるだろうに!」

「おい、めったな事は言うもんじゃねえ、やめろ」

荷物に夢中だったアマンダが話しに加わり同調するのをラミンが諌めちらりとミレイアを見た。

「私、馬の様子を見てきます」

暗い顔をして俯きミレイアは外に出て行った。

王女は、ここにいる。
そう言ったらあの人たちはどうするだろう…。
自分の存在がこんな優しそうなおばあさんにまで暗い影を落としている。

馬たちに干し草を与えながらミレイアは自分の存在自体が人々を苦しめているのだと思うと落ち込んだ。
先ほどライオネルの悲しみを吸って自分の感情もコントロールできない。
涙が止めどなく流れぽたぽたと足元に落ちる。
そこにバサッとフードを被せられ横を向くと頭を引き寄せられた。

「お前は何もわるくねえ、気にすんな」

「……」

ラミンは頭を抱え耳元で言うと、暫く抱きしめ頭をポンポンと叩き離れた。

「戻るぞ」

フードからその姿を見るともう翻して背中しか見えない。
それでも自分を気にして言ってくれたことがミレイアは嬉しかった。
抱えていた悲しい感情も重苦しさも少しだけ晴れるような気がした。

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