魔法の鍵と隻眼の姫
「ちょっと!何してんのよ!」

見つめ合う二人に不機嫌な声がかかる。
アマンダが足をひょこひょこさせて玄関から出てきた。
しっかり着替えて化粧もしてる。

「なんだ、お前起きてたのか?」

「おばさんおはよう!ペンダントが見つかったんだよ!おばあちゃんおばあちゃん!」

「なっ!おば…!」

ニコニコのライオネルにおばさん呼ばわりされ、そのライオネルはおばあさんにペンダントを見せるために家の中に入って行った。

くくくくくっと笑い声が聞こえる。

「くくっお、おばっ…ぶっははっ」

腹を抱え我慢できずに笑い出すラミン。

「失礼な!あたしはまだ25よ!ラミン笑いすぎ!」

プンプン怒るアマンダに近づき肩を叩くラミン。

「あの坊主にとっちゃおばさんだろうよ、母親も25だったって言ってたからな」

よしよしと慰めるようなラミンの手を払ったアマンダはミレイアを指差す。

「じゃああの子は何でお姉ちゃんって呼ばれてるのよ!私とたいして変わらないでしょ?!」

こっそり笑ってたミレイアに矛先が飛んでピタッと止まった。

「…私、15だけど」

「え?…あたしより10も下なの?…」

絶句するアマンダを横目にミレイアは家へ入って行った。
アマンダの顔が面白くてまたぶぶっと笑うラミン。

「ラミン笑いすぎだってば!あたしがおばさんならラミンはおじさんなんだからね!」

「わりいわりい、お前の顔が面白かっただけだ」

「それ余計に失礼だから!」

悪い悪いと膨れるアマンダを慰め肩を支えると一緒に家に入った。

「ああ、見つかったのかい良かったねえ。おや、汚れてるじゃないか。水で洗っておいで」

トレニーがライオネルの頭を撫で水場に促すと、うん!と元気良く返事をし奥へ入って行った。

「お嬢さんありがとうね。こんなに早く見つかるなんて、元気の無かったあの子があんなにはつらつとしてるのは母親が亡くなって以来だよ」

ミレイアの手を取りお礼を言うトレニーは、あいたたと手を離し腰に手をやる。

「トレニーさんどうしました?」

「いやいや、最近腰を悪くしてねぇ、あの子の母親代わりもしなきゃいけないのに思うように動けなくて」

イタタと腰を擦るトレニーを見てミレイアは鞄を取り出しごそごそと漁る。

「トレニーさん、痛みに良く効く軟膏があるので塗ってあげます。お部屋に行きましょう」

軟膏を手に部屋へと促すミレイアにラミンがはっと気付く。

「お前、まさか…」

ミレイアと目が合うと何も言うなと目が訴えてきて思わず止まった。
そのまま二人は部屋へ入って行ってしまった。

「……」

ミレイアの姿を追うラミンにムッとしたアマンダは無理やり自分に顔を向けさせた。

「ラミン、あたし頑張って早起きして支度したのよ褒めて!」

そう言い顔を引き寄せキスをしようとすると、ピタッとラミンが止まって拒まれた。

「ラミン?」

「あ、いや…偉いな、毎日そうしてくれると助かる」

さり気なく自分から離れたラミンに眉根を寄せるアマンダ。
ラミンは片手で顔を覆いどうしたのかと自分でも悩む。
昨日まではアマンダのキスも普通に受け入れていたのに今は受け入れ難く拒んでしまった。

あいつの笑顔がチラついた…。

なぜだか解らないラミンはミレイアの入って行った部屋のドアを見つめた。
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