魔法の鍵と隻眼の姫
「お前はわしの探し求めてた魔法の鍵。お前が悪夢に苛まれることはもう無い、出会ってしまったからのう。そして、お前の求める守るべきものは王宮にいる。さあ、わしと共に行くのじゃ」

「え、鍵?いや、俺はもう国には帰らない。父にも勘当されている。それに、仲間を置いてはいけない」

倒れている仲間を見やり、立ち尽くすラミン。

「心配いらぬわ、こやつら目覚めたら戦っていたことも忘れて各々の国へ帰るじゃろうて。」

「そ、そうか」

ホッとしたラミンは、ん?と頭をひねる。

「爺さん、そんな魔法使えるのなら世界の戦ってる奴に魔法を掛けて戦いをやめさせてくれよ。そしたら犠牲者もいなくなる」

「馬鹿者!この魔法を世界に使うのにどれだけの労力がいると思うのじゃ!時を止めるのも一苦労というに、わしを殺す気か?」

「え?いや、そんなつもりじゃ…」

怒るモリスデンに肩をすくめるラミン。

「それに、一時戦いを止めてもまた人は戦を始める。欲の深い人間というものは同じ過ちを何度起こしても懲りぬ…」

「・・・・」

何度も戦に赴いたラミンも同じ思いだった。
守るために戦ってきた。
でも、そんな大義名分も忘れてしまうほど何のために戦っているのかわからなくなることがある。
土地を焼き払い、殺し合い、人々を苦しめ後に残ったのは荒れ果てた大地と死者と虚しさだけだった。
なのに戦は無くならない。

「この戦を止めるためにもお前は王宮へ行かねばならぬ。そして、鍵を開け守るのだ。守るべき者をこの世界を」

振り向いてモリスデンを見据えたラミンは頷いた。

「何の事か分からないが…とりあえず爺さんに付いて行けば俺の求めるものが分かるんだな?」

「ああ、きっと…」

ラミンは王宮へ行くことで自分の運命も変わることをまだ知らずにいたが、モリスデンは予期していた。
白銀の髪、ブルーグリーンの瞳…こやつ、もしかすると…。

そして、モリスデンの魔法は解け、世界は目覚めようとしていた。

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