魔法の鍵と隻眼の姫

バットリア

ここはメリダヌス帝国の中心地バットリア。
あんな戦を繰り広げてるのが嘘かと思うほど人々は行き交い日常を送っている。

「ところでアマンダ、言い伝えはどこで聞いたんだ?」

「あ~うん、その前に大公園に行きましょ?そこに私の一座がいるから」

「……そうだな」

アマンダを送り届けてから探した方が身軽かと頷いたラミンは大公園に向かった。

アマンダは言い伝えのことをすっかり忘れていた。
どう誤魔化そうか考えあぐねている。

出来れば小娘をなき者にしてラミンを一座に引き入れたい。
そしたらずっとラミンと一緒にいられる。
ずっと自分だけを見てくれるはず。
あの小娘さえいなければ…。

黒い嫉妬がアマンダを支配し小娘さえいなければ全て上手くいくと思い込む。
自分達の後ろから付いてくるミレイアを盗み見ては睨んだ。

悲しみは泣いた後太陽の光りを浴びて少しは晴れたはずだが粘着質のようにまとわり着く負の感情は残ったままミレイアを苦しめていた。

まだ、耐えれる。
ミレイアは自分に言い聞かせてここで言い伝えのことが少しでもわかればきっと求めるものにたどり着けるはずと自分を奮い立たせていた。


大公園に着くとそこは広いレンガの石畳が横断し傍らには屋台が立ち並び大道芸人達が技を競い合っていた。
ここも戦場とはかけ離れた光景。
笑い喜ぶ観客に複雑な目を向けるラミン。
その奥に行くと馬車を3台連ねた前に一際人だかりが出来歓声が上がっていた。

「あれだわ!コジット一座へようこそラミン!」

久しぶりに仲間に会える喜びに興奮したアマンダがラミンの後ろから乗り上がりラミンの頬にキスをした。

「みんなー!」

一座に向け馬上から大手を振り大声で呼び掛けると観客が振り向きラミンとアマンダに注目が注がれる。

「おお!世界一の踊り子、我が娘アマンダのご帰還だ!」

大柄髭面の男が叫ぶと観客はより一層盛り上がり花道のように人だかりが割れた。

先に降りたラミンがアマンダを抱き下ろすとどよめきが起きアマンダはラミンの手を離さず花道を二人で歩いた。

その光景を馬上から見ていたミレイアはフィーダから降りるとウォルナーの手綱も一緒に引き端にある草原に身を置いた。

ラミンとアマンダの二人を見ていたくない。

初めて3人で旅をする事になったときよりもその気持ちが強くなっていたミレイアは自分の中から涌き出るような黒い感情に戸惑っていた。
草原に腰掛け草を食むフィーダ達をボーッと見る。
相変わらず一座の周りは人だかりで音楽と歓声が上がる。

早くこの場から去りたい。

ミレイアは膝に頭を埋め項垂れた。
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