魔法の鍵と隻眼の姫
ふと、目を覚ましたラミン。

「あ、寝てしまったか…」

ベッドを見るとスヤスヤと寝ているミレイア。
額に手をやると熱は下がったようで穏やかな顔をしている。
ホッと安心するも一瞬ミレイアの周りが黒いオーラで囲まれてるように感じた。

「ん?…気のせいか?」

目を凝らしても黒い物は見えない。
何でもないかと伸びをして大あくびをかいたラミンは立ち上がり外に出た。

辺りは暗いが朝のようでスズメがちゅんちゅん鳴いている。
変な体制で寝ていたからあちこち痛い。
首を回すと温泉にでも入って解すかとテントの中に戻ってノニの用意してくれた服を持ちミレイアの様子を窺ってまだ起きないなと安心して温泉に向かった。

温泉は脱衣所も完備され湯煙で辺りは見えづらく岩風呂は広々としていた。

「久々にゆっくりできるな…」

「だれ?」

湯船につかると女性の声がしてここは混浴だったと思い至る。
湯煙から人影が現れて一瞬焦った。

「誰もいないと思った…」

「ラミン?」

ん?と目を凝らすと現れたのはアマンダだった。
豊満な胸も隠すことなく相手がラミンだと分かると喜んで近くに寄ってきた。

「ラミンじゃない、おはよう」

「ああ、アマンダか。珍しく早起きだな?」

「最近早起きさせられてきたからくせになったみたい。自然と目が覚めたわ」

ラミン達との旅で否応なしに早起きして出立していたからと嫌味たっぷりに流し目でラミンを見るアマンダ。

「そりゃ良かったんじゃないか?早起きできるようになって礼を言ってもらいたいぐらいだな?」

ニヤリと笑うラミンにもう!と文句を言いながらも笑うアマンダは思わぬところで一緒に温泉に入れたことを喜んだ。
じりじりと近づき自慢の胸を押し付ける。
そんな腕に触れてくるアマンダからさり気なく遠ざかるラミン。

「昨日は悪かったな。テントを貸してもらって助かった。おかげで小娘の熱も下がったようだ」

昨日のやり取りが嘘のように優しく自分を見るラミンに胸が高鳴るアマンダ。

「そ、それは良かったわ」

「あいつが起きれるようになったら出立するよ、あまり時間もないしな。アマンダは言い伝えの事は教えてくれないんだろう?」

昨日意地悪を言って教えてあげないと言ったことを真に受けたラミンは既にどこで聞いて回ろうかと思案する。

「そ、それはダメ。後であたしが教えてあげるからまだ行かないで!ラミンなんでそんなに言い伝えの事を知りたいの?そんなこと聞いてどうするのよ」

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