魔法の鍵と隻眼の姫
にじり寄ればにじり寄るほど遠ざかってくラミンに不満を持ちつつそもそものラミン達の旅の理由を聞いた。

「あまり詳しいことは言えないんだが。言い伝えを調べて、この世界の事を知らないといけない。それは俺たちのルーツにも関係あることなんだ」

あの小娘と二人の事だと、だから二人で旅をしないといけないと言うラミンは穏やかな顔をして小娘の事を想っているのが分かる。

ジリジリと嫉妬の炎が燃え上がるのを感じたアマンダは岩に背を預けるラミンに正面から膝に乗り体を伝う黒い痣を撫でた。

「おい、何してる」

「ラミン、この一座に加わらない?ラミンなら一座の護衛としてもその身体能力を活かしてスターになることも簡単よ。私と一緒に旅をしましょう。その間に言い伝えの事も調べるといいわ」

「あまり時間がないんだ。あいつが16になる前に全て終わらせないと…アマンダ離れてくれないか?」

首に腕を巻き付けぎゅうぎゅう豊満な胸を押し付けてるのにラミンは至って冷静でアマンダを見上げ、巻き付く腕を取ろうとする。

かつて甘い顔で抱いてくれたラミンはどこにもいなかった。

「そんなにあの子のことが大事なの?ラミンあたしを抱いて。あの子の事なんか忘れさせてあげるわ」

「…悪い、そんな気になれない」

何度も抱いた事があるのに今は全く食指が立たない。
自分でも不思議に思いながらキスをしてこようとするアマンダの肩をグイッと押しやり離れるとざばっと立ちあがり出て行った。

一人残されたアマンダは呆然とする。
裸のあたしを見ても欲情もしないなんて…。
悔しさから噛んだ唇から血が滴り落ちる。
アマンダの周りからじわじわと黒いオーラが漂い出てきてアマンダを包みこむ。

みんな、みんな、あの小娘のせい…。
あの子さえいなければ…
ラミンはあたしのものよ…。

うわ言のようにぶつぶつと言うアマンダは人が変わったような形相をしていた。


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